2005年9月,韓国Samsung Electronics Co., Ltd.が,16GビットNAND型フラッシュ・メモリーを発表した(Tech-On!の関連記事)。1999年以降,毎年「1年で2倍」の大容量化を6年間連続して実践してきたことになる(図1)。

 東芝も2006年度上期の16Gビット品の量産をすでに表明しており,NAND型は「16Gビット時代」を迎えることになる。このような大容量化によって,NAND型の応用範囲は,既存の音楽プレーヤや携帯電話機から一層広がり,携帯型パソコン(PC)の「タブレット型PCで使われるようになる」とSamsungでは期待している。同社は,将来的にはノートPCのHDD(ハード・ディスク装置)の置き換えも狙っている。

新型トランジスタを採用へ

 Samsungが開発したNAND型は,50nmプロセスを使う。このプロセスに対応するため,同社は非プレーナ型の新構造トランジスタを採用する計画である。具体的には「『MBCFET(Multi-Bridge-Channel MOSFET)』やフィンFET」(同社)という。どちらの技術を採用するのかは現時点では不明である。Samsungは,このMBCFETやフィンFETの研究成果を既に「2005 Symposium on VLSI Technology」などの学会で発表済みである。ただし,この技術をそのままNAND型の製品に搭載するのではなく,学会発表技術の「改良版」(同社)を製品に採用するとしている。こうした3次元構造は,セルの小面積化,漏れ電流削減による低消費電力化に貢献する。

 なお東芝は同じ16Gビット品でも,設計ルールは55nmとSamsungに比べて緩やかであり,非プレーナ型を採用するとは,公言していない。これは,同じセル面積で2倍の大容量化が可能な2ビット/セルのMLC(multi level cell)技術を採用するからである。Samsungは,従来通り1ビット/セルのSLC(single level cell)技術を採用すると見られる。

 50nm プロセスでの量産向け露光技術に関してSamsungは「決めていない」(同社)とする。液浸ArF技術に対して同社には,「露光時のプロセス工程数が非常に多くなる」との懸念があり,これが露光技術を決めていない一因である。


図1●「1年で2倍」のペースを維持 韓国Samsung Electronics Co., Ltd.のNAND型フラッシュの開発経緯。左上の写真は同社が提供。右下の写真は「MBCFET」の断面写真。同社のデータ(2004 Symposium on VLSI Technology, Digest of Technical Papers, pp.200-201)。写真以外は本誌が作成。