非発光の液晶パネルが本質的に抱えてきた問題の一つを,解決できる可能性が見えてきた。その切り札となる技術が「エリア・コントロール」である。

 エリア・コントロールとは,液晶パネルの画面を複数の領域に分割し,各領域の輝度を制御する技術である(図1)。これを使えば,闇夜などの暗い表示と,星や月などの明るい表示を同一画面で表現できるようになる。こうした特性は,発光輝度を画素ごとに制御できる自発光ディスプレイが特有に持っていた。一方,従来の非発光の液晶パネルでは,バックライトの輝度が面内で一定となる。エリア・コントロールはバックライトの発光領域を面内で複数に分けることで,液晶パネルでも画素ごとまでとはいかないが,それに似た輝度制御を可能にする。

 特に注目できる取り組みとして,LEDバックライトを使ってこのエリア・コントロールを実現したのが韓国LG.Philips LCD Co.,Ltd.である。冷陰極管ではなくLEDと組み合わせることで発光領域の分割数を容易に増やせることになり,面内の輝度を細かく制御しやすくなる。

ピーク輝度と消費電力の改善が進む

 実用化の課題は画質,消費電力,コストである。このうち画質と消費電力を改善した47型(対角119cm)パネルを,LG.Philips LCDが開発した。ピーク輝度を400cd/m2から500cd/m2に高めると同時に,全白表示時の消費電力を500Wから300Wに削減した。「光学系とエリア・コントロールのアルゴリズムの改良で実現した」(同社)と言う。

 このほか,フィールド・シーケンシャル液晶に応用する動きも出てきた。画面を10個の領域に分けて各領域の発光を制御するLEDバックライトを,日本ライツが6型(対角15cm)のOCB(optical compensated bend)液晶向けに開発した。


図1●LEDバックライトを使ったエリア・コントロール液晶 LEDバックライトの発光領域を面内で複数に分け,映像信号に合わせて発光量を制御する。韓国LG. Philips LCD Co., Ltd.のデータ。