auxiliary power unit

 自動車の電動部品を駆動するために,既存のオルタネータ(発電機)と鉛蓄電池の代わりに搭載する補助電源。本格的なエンジン代替の燃料電池車が実用化する前にまず,コスト面からAPUで燃料電池の実用化を目指そうという動きがある(図1)。燃料電池自動車では燃料電池のスタック・コストを50米ドル/kW以下にしなければならないが,APUならば200米ドル/kW程度でも採用できるからだ。

 欧米の自動車メーカーを中心に導入機運が高まっている電源の42V化もAPUにとって追い風になっている。電動エアコン,電動ステアリング,電動ブレーキ,電動エンジン・バルブなど,新しい電動部品の開発,搭載が活発化しているが,そのためには高電圧で大容量の電源がほしい。

 ドイツBMW社は1999年ころ,燃料電池APUの開発を熱心に進めていた。燃料電池のタイプとしてはPEFC(固体高分子型)とSOFC(固体酸化物型)の両方で検討していた。その後,2次電池の性能向上などで燃料電池APUの開発熱は冷めかかっていたが,最近,小型のSOFCの技術的な進歩が相次いだことで,再びAPUへの応用が注目されるようになってきた。SOFCは反応温度が高く,エネルギー効率が高い。純水素以外の燃料でも利用できるため使いやすい。

APUを使った自動車の電力供給システム
図1 APUを使った自動車の電力供給システム
現状のパワー・トレーンはガソリンを燃料としてエンジンを回し,それを車輪に伝えるとともに,ベルト駆動によりオルタネータで発電して鉛蓄電池(バッテリー)に充電し,各種電動部品を駆動している(a)。通常の乗用車などでは電圧は14V。これに対して,将来はオルタネータと鉛蓄電池を廃止して,発電装置であるAPUを備える(b)。ここではガソリンを燃料として採用しているが,さまざまなタイプが可能。電圧は42V。ここで積んでいるバッテリーは燃料電池が作動温度に達していないときにエネルギーを補給するためのもの。