MEMS(microelectro mechanical systems)技術を使ったディスプレイが,続々と実用化に向かい始めた。「MEMSディスプレイ」というと,米Texas Instruments Inc.が量産している「DLP(Digital LightProcessing)」の搭載品がよく知られている。MEMS技術による「DMD(Digital Micromirror Device)」をコア・デバイスとして使う。ここへ来て,DLP搭載品とは別の原理に基づくMEMSディスプレイの発表が相次いでいる。

携帯電話向けとテレビ向けに

 米QUALCOMM Inc.は,2004年9月にMEMS ディスプレイの開発ベンチャである米Iridigm Display Corp.を買収すると発表した。同社の持つ「iMOD」技術を使って携帯電話機用のカラー・ディスプレイを開発するためである。この技術では,外部からの入射光が,ガラス板と金属板の間で繰り返し反射することによって変調されて,特定の色の波長のみが外に出る原理を使っている。この色は,2枚の板の間隔によって変わる。2枚の板は,静電気力によって,間隔を持った状態から接した状態へと自由に変えられる。接した状態では,光は外に出ず黒色となる。この原理によって,赤,緑,青の3原色をカラー・フィルタを使わずに出せるため,明るい表示が可能になる。

 ソニーは,MEMSデバイスによる回折光のオン/オフで実現する2005型(対角51m)のプロジェクタを開発,2005年3月開催の「愛・地球博」に出展する。回折光は「GLV(Grating Light Valve)」技術で制御し,回折光フィルタと組み合わせて出力光をオン/オフする(図1)。数百本並べた数μm 幅のリボン状金属板に段差を付けて回折光を生じさせる。同社がライセンス契約を結んだベンチャの米Silicon Light Machines 社(2000年に米Cypress Semiconductor Corp.が買収)の技術を基にした。


図1●MEMSによるプロジェクタの構成例 (a)プロジェクタの光源にGLV を使う。(b)GLVでは,数μm幅のリボン状の金属板を数百本並べる。その金属板は,固定したものと可動のものを交互に並べておく。可動の金属板の高さを静電気力で制御し,金属板のアレイの表面に段差をつけたり,つけなかったりする。段差がある場合のみ回折光が生じる。回折光のみを通過する光学フィルタで出力光をオン/オフする。なおソニーは,GLVを使ったプロジェクタの製品化計画については未定としている。米Silicon Light Machines社のデータ。