Anchor Effect

 プリント配線基板に使うCu配線の粗さに起因する導体損失のこと。Cu配線は表面に凹凸を付けることで,プリント配線基板の誘電体との接着性を高めている。

 この凹凸のことをプロファイルと呼ぶ。信号周波数が高速になるとプロファイルの凹凸に沿って電流が流れるようになる。そのためプロファイルが抵抗として作用し,信号が減衰してしまう。信号周波数が5GHzを超えるあたりからアンカー効果を考慮して基板を設計する必要があるとされている。アンカー効果に注目が集まるのはこれからだ。例えば,次世代のPCI Expressでは機器を設計する上で,アンカー効果の影響は避けて通れないとみる技術者は多い。なお,現時点でアンカー効果を正確にモデリングする手法は確立されていない。

 プロファイルを抑えれば,その分だけアンカー効果は小さくなる。プリント配線基板向けのCu配線を開発する材料メーカー各社は少しでも小さいプロファイル品を提供しようと競っている。2005年6月に開催された実装関連技術の展示会「JPCA Show 2005 第35回国際電子回路産業展」で,日立化成工業がロー・プロファイルをうたうCu配線を展示した。プロファイルが1.1Nm~1.5Nmと小さいのが特徴。一般的なCu配線のプロファイルは4Nm~6Nm,プロファイルの小ささをうたうものでも2.7Nm~3.3Nmだった。これだけプロファイルが違うと,伝送損失も大きく変わる。例えば,5GHzの高速信号を伝送する場合,一般的なCu配線に比べて伝送損失を約8dB/m低減できる。

 ロー・プロファイル化する上で材料メーカー各社の競いどころは,いかに接着性を劣化させないかという点である。多くのメーカーはCu配線に表面処理を施すことで接着性を高めようとしている。


信号周波数が5GHzを超えたあたりから顕在化するアンカー効果(図:アイカ工業)