Duo Binary Transmission

 隣り合う信号に対するシンボル間干渉(ISI)を許容する伝送方式のこと。プリント配線基板上での高速伝送に向ける多値伝送技術の1つである。デュオバイナリ伝送はサーバ機のバックプレーンなどに向けた技術。これまでに光通信などの分野で広く応用されてきた。従来の2値伝送に比べて同じデータ伝送速度をより低い信号周波数で実現できる。データ伝送速度の向上を可能にしつつ,伝送距離の延長にも利用できる技術である。通常,信号を伝送するのに必要な信号周波数が高周波になるにつれ,プリント配線基板上での信号の減衰は大きくなる。減衰が大きい伝送路だと受信端の信号が送信端での信号振幅よりもずっと小さくなってしまうため,デュオバイナリ伝送のような多値伝送を利用した方がより多くのデータを送ることができる。

 デュオバイナリ伝送が必要になってきたのは信号の高速化に伴い,増大するISIを抑えるのが難しくなってきたためである。信号が高速になると,低周波成分と高周波成分の間に伝送路での減衰差や位相のずれが生じる。これにより伝送ビットが前後のビットに対して波形干渉しやすくなる。これがISIである。ISIが増大すると,信号のアイ開口が得られなくなってしまう。従来は伝送路での損失を見込んで,あらかじめ送信波形の一部を意図的に変える波形等化技術を用いることでアイをある程度大きくしていた。しかし,信号周波数が5GHzを超えると,波形等化技術をもってしてもアイを開くのが難しくなるとされている。

 デュオバイナリ伝送ではこれまで補正の対象だったISIを許容することで送信端での波形等化を不要にした。前のデータの干渉を許容するため,2値の送信に対して受信は3値となる。具体的には前のデータも現在のデータもともに0の場合の受信データは0,前のデータが0で現在のデータが1,前のデータが1で現在のデータが0の場合は受信データが1,前のデータも現在のデータもともに1の場合の受信データは2となる。

 現在,NECや米Lucent Technologies Inc. の研究所Bell Laboratoriesなどがデュオバイナリ伝送を使ってプリント配線基板上で10Gビット/秒超のデータ伝送を試みている。NECは低誘電損失のFR-4基板を使って75cmの伝送距離を12.5Gビット/秒でデータ伝送することに成功している。


シンボル間干渉を許容することで高速伝送を可能にするデュオバイナリ伝送