Flexible Optical Waveguide Film

 LSI間の光伝送に用いる配線材料。厚さ1mm未満といった薄いフィルムに,光を通すコア材料を埋め込んだ構造を採る。最小曲げ半径が1mm~2mmと小さく,繰り返し曲げても劣化しにくいという特徴を備える。発光素子であるVCSEL(vertical cavity surface emitting laser)や,受光素子のフォトダイオードと組み合わせて使う。材料によっては1G ビット/秒を超えるデータ伝送速度を実現できる。折り畳み型携帯電話機の内部で,液晶パネルやカメラとマイクロコントローラ間の接続に用いることなどが検討されている。ディスプレイと本体を結ぶヒンジ部の配線スペースが狭いうえ,液晶パネルの画素数が増えたことに伴い従来の電気伝送ではEMI対策が難しくなってきたためである。

 発光素子や受光素子を加えたフィルム状光導波路のコストは,同等のデータ伝送速度で比べたときに電気配線とほぼ同じになるという見方もある。受光素子と発光素子のコストが下がったことに加えて,フィルム状光導波路のコストを抑える製造方法が考案されたことが背景にある。これまではフォトリソグラフィを用いていたため,TAT(turn-around time)が数時間以上と長い上に,製造装置が高価だったことからコストがかさんでいた。

 コストを大幅に引き下げる製造手法を相次いで開発したのは,オムロンや富士ゼロックスである。オムロンが開発した「SPICA複製法」は,金型に刻み込んだ微小な凹凸を,基板上に塗布した樹脂材料に押し付けて転写するナノインプリントの一種である。工数が少なく,TATが数分と短い。同社は,携帯電話機向けに幅が1mmで厚さが0.15mmの材料を開発済みである。波長が850nmの光の伝播損失は0.1dB/cmである。富士ゼロックスの「LAMM法」は,熱硬化性を備えるシリコーン・ゴムの一種であるPDMS(poly-dimethylsiloxane)を鋳型として利用する。PDMSは複写機でトナーを定着する加熱用 ロールの表面に使っている材料である。接着性が非常に低いため,導波路を形成後に鋳型をはがす際に,導波路にダメージを与えにくい。このため,0.06dB/cmと光導波路としては低い伝播損失を達成できた。基板を使わないことから,廃材がほとんど生じないため,光導波路のコストを削減できる。TATは30分~40分である。