Low Voltage Differential Signaling,Digital Visual Interface,High-Definition Multimedia Interface

 デジタル・データを導体で高速に伝送しようとする場合,まず問題になるのは遷移時間である。データ信号が高レベルから低レベル(あるいは低レベルから高レベル)に移行するまでの時間を短くしなければならない。さもないとデータ伝送速度を上げるにつれて信号波形がなまってしまい,論理レベルの判別が難しくなる。

 遷移時間を短くする簡単な方法は,論理振幅(信号振幅)を小さくすることである。同じデータ転送速度でも,論理振幅が小さいほうが遷移時間は長くてすむからだ。

 ただし論理振幅を小さくすると,外部雑音に弱くなるという問題がある。パソコン・システムでは最近まで,シングル・エンドで信号を伝送することが多かった。1本の配線で電気信号を伝送する手法である。この方法は本質的に雑音に弱い。

 そこで2本の配線を利用して極性の異なる電気信号を伝送する差動伝送とする。2本の配線で送った電気信号の差分をデータとする。配線本数が多くなるという欠点はあるものの,シングル・エンド伝送に比べると外部からの雑音に強い。

 こういった考え方から生まれた小振幅の差動伝送方式が,米National Semicondoctor社が開発した「LVDSインタフェース」である。振幅は数百mVと小さく,データ伝送速度(推奨値)は655Mビット/秒と高い。理論的な最大データ伝送速度(無損失線路の場合)は1.923Gビット/秒に達する。実際には伝送距離や導体損失などの条件に合わせて転送速度を決める。

LVDSで画像信号を送るDVI

 DVIはLVDS技術を利用したディスプレイ・インタフェース技術である。デスクトップ・パソコンと液晶ディスプレイを接続する目的で策定された。LVDSの一種であるTMDS(Transition Minimized Differential Signaling)をデータ転送に利用している。なおTMDSは米シリコンイメージ社が開発したシリアル・データ転送技術である。

 DVIは赤色(R),緑色(G),青色(B)のデジタル信号を別々の信号線を使って伝送する。従来のアナログRGB伝送に比べると高品質の画像を表示できるようになる。DVIでは2種類のコネクタを規定している。デジタルRGBとアナログRGBの両方を扱える29ピンのDVI-Iと,デジタルRGB専用の24ピンのDVI-Dがある。

デジタル家電をつなぐHDMI

 液晶テレビ受像機やプラズマ・テレビ受像機などの薄型テレビも従来,カラーRGB信号のデジタル・インタフェースとしてDVIを使用してきた。しかしDVIはテレビ受像機用としてはコネクタの外形寸法が大きい。そこでDVIを元にテレビ受像機やビデオ機器などに向けて改良したインタフェースが,HDMIである。

 HDMIでは,信号伝送にはDVIと同じTMDSリンクを使うものの,リンク数を1本に減らしている。1本のケーブルで映像信号と音声信号,制御信号を伝送する。この結果,コネクタとケーブルがDVIに比べるとはるかに小さくなった。なお,映像信号伝送には通常のビデオ機器と同様に,YUV信号を使えるようになった。データ伝送速度は5Gビット/秒と極めて高く,HDTV(high definition television)信号に十分対応する。


HDMI対応のコネクタ(日本航空電子工業の試作品)
HDMIは,DVIをテレビ受像機やビデオ機器などに向けて改良したインタフェース規格である。『日経エレクトロニクス』,2003年1月20日号,p.31より。