端末の高速移動時でも通信を続けられる無線データ通信の物理層とMAC層の規格「IEEE802.16e」を基盤にした移動体通信の仕様。5M~20MHzの帯域幅を利用することで,回線が空いている場合には最大データ伝送速度が75Mビット/秒,実効的にも10M~20Mビット/秒と無線LAN並みの高速性が得られる(図)。携帯電話のような広域サービスが可能なほか,時速120kmと高速で移動中でも,数Mビット/秒で通信を続けられる。

 ハンドオーバーを簡略化するなどしてある程度通信のQoS(サービス品質)を割り切ることで,高速大容量のデータ通信サービスが大幅に低コストで提供できると期待されている。通信のQoSを強く意識したこれまでの広域をカバーする移動体向けデータ通信サービスとは一線を画したものといえる。

 ただし,周波数利用効率はHSDPAやEV-DOと同等かやや高い程度にとどまる点である。周波数利用効率が低いと,セル内での収容ユーザー数が増えた際にユーザー当たりのスループットの落ち込みが激しくなる可能性がある。周波数利用効率を上げるため,MIMO(multiple input multiple output)を利用も考えられているが,複雑な信号処理が必要なMIMOの実装は端末の消費電力が大きな課題となる。

 モバイルWiMAXは国内外で実用化の動きが活発である。国内ではKDDIのほかに,ソフトバンク系列のBBモバイル,NTTグループが実証試験に着手しており,イー・アクセスも「WiMAX推進室」を立ち上げている。これまで移動体通信から距離を置いていたアッカ・ネットワークスまでもが実験を始める。こうしたことから,早ければ2008年にも2.5GHz帯の周波数を使ってサービスが始まる見通しである。

図 高速移動しながらMビット/秒
図 高速移動しながらMビット/秒日経エレクトロニクス2006年3月13日号より抜粋)

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