番組の放送時間にかかわらず,視聴者の都合にあわせて時間をずらして視聴できるという機能または概念。

 ソニーの創業者である盛田昭夫氏がつくった造語とされている。1970年代に米国で起こった「Sony Corp. of America対Universal City Studios, Inc.訴訟」,いわゆるベータマックス訴訟のときに,映画会社側が「著作権者ではない個人が許可なくテレビ放送で流れる映画コンテンツを家庭用VTRに録画するのは複製権の侵害で,それを行える機器を製造,販売するソニーにも責任がある」と主張したのに対し,盛田氏はこのタイムシフトの概念を持ち出して「家庭用VTRは,一般消費者が受信機を持っていれば見ることができる番組を,単に時間帯を変えて見せているだけ」と説明し,最終的には勝訴した(訴訟の経緯に触れたソニーのページ)。

 その後,ハード・ディスク装置(HDD)内蔵のDVDレコーダや,いわゆる録画パソコンなどが普及し,それらが備えている「追っかけ再生」のような機能もタイムシフトと呼ばれるようになっている。追っかけ再生とは,現在録画中の番組を,そこより前のシーンに戻ってそこから通常速または少し早送りで再生することをいう。つまりDVDレコーダなどは,録画と再生を時分割で並行処理することで,録画が終了してからでないと見ることができなかったVTRなどよりもタイムシフトの自由度を高めたといえよう。