水蒸気をさらに過熱し,+100℃を超える温度になった蒸気のこと。熱伝導率が高いため,オーブンに使えばうまく焼けるようになるとされているほか,油や塩分を落とす効果があるとして白物家電メーカーが注目している。過熱水蒸気が温度の低い食品の表面に触れて液化する際の凝縮熱によって高効率で伝熱できるという。過熱水蒸気で油を溶かす。表面に付着する凝縮水が塩分を吸収する。

 過熱水蒸気を用いて食品を加熱する機器は業務用オーブンでこれまでにも市場に出回っていた。この技術を家庭用オーブンに初めて採用したのが, 2004年9月にシャープが発売した「ヘルシオ」である。業務用オーブンで使っていた技術を家庭向けに転用するに当たり,同社が苦労したのは電力の小ささだった。100V,15Aの電源で加熱ムラのないオーブンを実現するために過熱水蒸気の噴出方向を変え,さらに吹き出し口の穴を小さくすることで過熱水蒸気の噴出圧力を高めた。これにより食品に過熱水蒸気を届きやすくした。

 シャープに引き続き,2005年6月には日立ホーム&ライフソリューションが過熱水蒸気を利用したオーブンと炊飯器,2005年7月には東芝コンシューママーケティングがオーブンを発売した。

過熱水蒸気を利用した家庭用オーブン「ヘルシオ」 図 過熱水蒸気を利用した家庭用オーブン「ヘルシオ」
(日経エレクトロニクス2004年9月13日号より抜粋)