図 RFアーキテクチャの違いが受信性能や個別部品の数の違いに
図 RFアーキテクチャの違いが受信性能や個別部品の数の違いに
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 Si(CMOS)やSiGeなどの半導体プロセスを用いてにアナログRF回路を集積することで,テレビ放送を受信するチューナー機能を実現したICのこと。

 従来個別部品で構成していた「ディスクリート・チューナー」と比べて,(1)容積を大幅に小さくできる,(2)省電力,(3)量産時にはディスクリート・チューナーより低コスト化が図れる,といった特徴がある。ディスクリート・チューナーの容積が大きいのは,「CAN」と呼ばれるシールド用の金属の中にミキサやPLLなどのICのほか,フィルタなどのアナログ部を構成する直径数mmの空芯コイル,バラクタ・ダイオードといった数多くの受動部品を実装していたためである。Siチューナーは,これらのアナログ部をICに集積することで小型化を実現する。

 ただし,ICにフィルタ機能を集積する場合,ICに集積できるコイルの直径が数百μmと小さいことなどから,CANチューナーと比べてフィルタの性能を高めることが難しい。特にアナログ受信時に雑音が入りやすく,受信感度を高めにくいという欠点がある。このため,デジタル受信機能だけですむパソコンなどでは採用が進んでいた。一方で,アナログ受信機能が必要なテレビ製品ではほとんど利用されていなかった。現在は,外付けのチップ・インダクタで不足分を補うといった対策が採られており,アナログ受信でもCANチューナーと同等の受信性能を備える製品が登場している。テレビの主力製品に採用する家電メーカーも出てきた。

 現在実用化されているSiチューナーが採用するRFアーキテクチャは,大きく4種類に分かれる。「アップダウン・コンバージョン」「低IF」「ダイレクト・コンバージョン」「可変IF」である。これらの違いによって,イメージ妨害と呼ばれる,周波数変換に起因する雑音への耐性や,回路構造に起因する雑音を示す「雑音指数(NF)」,必要な外付け部品などが異なる。