接着剤が材料表面の凹凸や空隙に侵入したあと硬化することで,接着性を増す効果のこと。投錨効果あるいはファスナー効果とも呼ぶ。プリント配線基板に使うCu配線でも,エポキシ樹脂などと銅箔との接着性が弱いため,表面に凹凸を施すことで誘電体との接着性を高めている。この凹凸のことをプロファイルという。

 ただし,アンカー効果を利用すると,信号周波数を高めた時の導体損失が大きくなる。周波数を高めると信号が導体の表面を流れるようになり,プロファイル(凹凸)の影響を大きく受けるようになるためである。信号周波数が5GHzを超えるあたりからアンカー効果による損失を考慮した基板設計が求められるとされている。なお,現時点でアンカー効果に起因する損失を正確にモデリングする手法は確立されていない。

 Cu配線の凹凸による信号の減衰を抑えるにはプロファイルを小さくすればよい。そのため,Cu配線を開発する材料メーカー各社は少しでも小さいプロファイル品を開発しようと競っている。一般的なCu配線のプロファイルは4μm~6μmで,ロー・プロファイル品としては1.1μm~1.5μmがある。ロー・プロファイル品を使えば,5GHzの高速信号を伝送する場合で一般的なCu配線と比べて伝送損失を約8dB/m低減できる。

 ただし,プロファイルを小さくするとプリント配線基板の誘電体との接着性が劣化する。材料メーカー各社はCu配線の表面に何らかの処理を施すことで接着性を高めようとしている。

図 5GHz前後から顕著になるアンカー効果
図 5GHz前後から顕著になるアンカー効果 (日経エレクトロニクス2005年6月6日号より抜粋)