水溶液とオイルの界面によって光を収斂または発散させる光学部品。特徴は,光学系が小型になる,製造コストが安くなる,消費電力を低減できるなどである。界面の形状変更によって所望の屈折力を得られるため,固体レンズのようにレンズ自体を光軸方向の前後に動かさなくてもオートフォーカス(AF)や光学ズームを実現できる。

 光学系が小型になるのは,機構部品なしで焦点合わせや光学ズームを実現できたり,レンズの位置を光軸に沿って動かす空間が不要になったりするため。製造コストを減らせる理由は,アクチュエータといった可動部品を用いる既存のAF機構よりも部品点数が少なく,さらに組み立てが簡単になるからである。このほか消費電力が少ない,ピント調整できる時間が速いといった特徴もある。

 液体レンズの界面形状は一般に,液体レンズ中の電極に印加する電圧によって制御する。液体レンズでは,水溶液とオイルを封じ込めた容器の内側に,部分的に撥水性コーティングを施してある。これにより,電極に電圧を印加していないときは,はじかれた水溶液とオイルがほぼ平らな界面を作る。これは無限遠に焦点が合った状態に相当する。電極に電圧を印加すると,絶縁部の周辺に電荷が集まり,周囲の力関係の中で撥水性が相対的に弱まる。水溶液とオイルの界面は光を収斂させる形状になる。

 フランスVarioptic社などは2005年末までに量産出荷の準備を終える。同社の技術を使って,韓国Samsung Electro-Mechanics Co.,Ltd.も液体レンズを造る見込み。そのほかオランダRoyal Philips Electronics社も開発している。

図 液体レンズの基本的な構造
図 液体レンズの基本的な構造 (日経エレクトロニクス2005年10月24日号より抜粋)