特許出願後,非公開のまま数十年間潜伏してから突如成立する特許のこと。ある技術が広く普及した後に特許が成立することから,企業が支払うロイヤルティーや損害賠償金が莫大な額になりやすい。広義には,市場が成立するまで存在が一般に知られず,ある日突然ライセンス料の要求に使われ始める特許を指すこともある。海中に潜水した後に突然姿を現す潜水艦になぞらえて名が付いた。

 2004年1月,米国ネバダ州連邦地方裁判所が,サブマリン特許の代名詞として知られる故Jerome H. Lemelson氏の特許に対し,特許の権利行使は認められないとする判断を下した(図)。こうした判決が下されたのは,出願から38年もたった後に特許を成立させたLemelson氏の一連の行動が,不当に出願手続を遅延させる「出願手続懈怠(prosecution latches)」に当たると認定されたためである。米国の裁判所で出願手続懈怠が認定されたのは,何と80年ぶりで,これによりサブマリン特許の強力な対抗策が登場したとされている。

 国際機関や企業間で策定した標準技術がサブマリン特許に狙われると,その脅威は産業界全体を揺るがすものとなる。Lemelson特許は,組み立てラインの監視制御などに向けたが画像処理技術(マシンビジョン技術)やバーコード認識関連の主要特許で,Lemelson側は多くの企業に特許侵害を指摘する警告状を送り,自動車メーカー11社が合計約1億米ドルを支払うなどの対応を迫られた。Lemelson側の主張を拒むメーカーとの間で現在も訴訟は継続中で,係争中の企業は400社程度に上るとされている。

 このほか記憶に新しいのが「JPEG特許」である。米Forgent Network,Inc.が画像圧縮の国際標準規格であるJPEGが同社の特許に抵触するととして,デジタル・カメラ・メーカーなど日米31社を提訴した事件である。デジタル・カメラだけでなくビデオ・カメラやプリンタ,スキャナなど対象となる機器が広範に渡るため,業界が騒然とした。

 なお1995年に米国は特許法を改正し,同年6月7日以降に出願した特許については,特許権存続期間を「出願日から起算して」20年間とした。さらに,1999年の米国特許法の改正による出願公開制度の導入で,米国でも2000年11月29日以降の特許出願を一般に公開することになった。ただし,こうした改正以前に出願された特許については,依然サブマリン特許が含まれる可能性がある。

図 米Lemelson Partnershipが出願手続懈怠の認定などにより敗訴
図 米Lemelson Partnershipが出願手続懈怠の認定などにより敗訴 (日経エレクトロニクス2004年12月6日号より抜粋)