ヒトの生体的な特徴を使って本人を認証する技術のことで,指紋や静脈などを利用する。これまでビルの入退出管理などで使われていた技術で,ここにきてカードの盗難や偽造が相次いでいることから金融機関のATMなどでも急速に普及している。暗証番号を使う従来手法と比較すると,いわゆる「成り済まし」などが困難となり,セキュリティの強度が増す。銀行カードのほかにも電子マネーやクレジットなどの「財布」の機能を備えつつある携帯電話機も紛失や盗難の可能性が高いことから,生体認証技術が本人認証のツールとして必要不可欠なものと位置付けられている。

 指紋や静脈の認証システムは指紋などを読み取るセンサと読み取った情報から認証を実行するアルゴリズムから構成される。このうち,指紋センサは接触型と非接触型がある。接触型には指紋の凹凸とセンサ表面の間に発生する静電容量を測定して指紋の凹凸の大きさを感知する「静電容量方式」や指紋表面にLEDなどの光源から光を照射し,その反射光をプリズムなどで集光する「光学方式」,指の温度と外気の温度の温度差を測定することで指紋を計測する「感熱方式」,指の内部とセンサの間で電界を発生させて,その電界の大きさを測定する「電界検知方式」などがある。

 指紋認証モジュールなどが携帯電話機に載るようになったのは搭載する機器とセンサそのものが進化したためである。例えば,携帯電話機ではアプリケーション・プロセサの処理能力が向上し指紋などのデータ照合処理が容易になった。また,端末に搭載するメモリ容量も大規模化しているため,照合用のデータ格納にも余裕がある。一方,センサの価格も下がっているため,廉価な機器でも搭載できるようになっている。

静電容量方式の模式図 図1 静電容量方式の模式図

光学方式の模式図 図2 光学方式の模式図
いずれも2003年10月13日号より抜粋