time division-synchronous code division multiple access

 中国情報産業省の下部組織CATT(電信科学技術研究院)と独Siemens AG社が共同開発した第3世代携帯電話(3G)の仕様。ITUにより勧告された3Gの国際規格の1つで,CATT系列の通信機器会社である大唐電信科技公司などが中心となり,中国での商用化に取り組んでいる。

 TD-SCDMAはTD-CDMA(time division-code division multiple access)などと同様,周波数帯域の利用形態としてTDD(time division duplex)方式を用いる。これに対しW-CDMAやCDMA2000は,FDD(frequency division duplex)方式を採用している。TDDは上りと下りを同じ周波数帯で使う方式であり,FDDは上りと下りの周波数帯が異なる通信方式である。

 TDDの利点としては,(1)FDDでは無線モジュールの送受信部分で2種類必要だったアンテナが1つで済み,分波器も不要になるため,端末を低コストでしかも小型に作れるようになる,(2)上りと下りにそれぞれ同じ帯域幅を割り当てて通信の非対称性が高いデータ通信を行う場合は,FDDより周波数の利用効率が高い,つまり同等の通信速度を出すのにFDDより狭い周波数帯域しか必要としない,などの点である。特に(2)は,都会の繁華街などで多数のユーザーが一斉にサービスを利用した場合に威力を発揮する(図1)。

 TD-SCDMAをTD-CDMAと比較すると,周波数の占有帯域,チップ・レート,データ伝送速度がいずれもTD-CDMAの1/3程度に規定されている。これは,TD-CDMAが高速データ通信を意識して策定されたのに対し,TD-SCDMAはデータ通信よりもむしろ電話サービスを重視して策定されたという経緯による。電話サービスの提供時は,下りだけでなく上りの通信品質も重要になる。このためTD-SCDMAは,上りの通信品質を確保するために,無線フレームを送るタイミングを基地局配下の全端末のチップ単位で同期させる仕組みを採用した。チップ・レートの高いTD-CDMAでは,この同期の要求に応える高精度の高周波クロック回路などが必要になり,端末の開発コストを押し上げてしまう。TD-SCDMAではチップ・レートを1/3に下げることでコストの低減を図った(図2)。

図1 FDDとTDDの周波数利用効率の違い
図1 FDDとTDDの周波数利用効率の違い
図2 基地局と端末で無線フレームのタイミングを同期させるTD-SCDMA
図2 基地局と端末で無線フレームのタイミングを同期させるTD-SCDMA
(図1,図2とも2004年2月16日号より抜粋)