ΔΣ変調を用いてアナログ信号をデジタル信号に変換するA-D変換器。他方式のA-D変換器に比べて,高い分解能を得ることができるという特徴がある。16ビット~24ビット品が製品化されている(図1)。さらにチップ面積が小さいことから,一般に他方式に比べ低価格という特長もある。ただし,もう1つの指標である標本化速度(変換速度)は他方式に比べて低く,一般に10数Hz~100kHz程度にとどまる。用途は大きく分けてオーディオ機器と計測向けがある。

 ΔΣ変調とは,アナログ信号をオーバーサンプリングした後に累積加算を計算(いわゆる積分)し,これを量子化して差分を計算(いわゆる微分)するもの(図2)。生成したデジタル信号にデジタル・フィルタ処理を施すことで,量子化雑音を低く抑えることができる。積分と微分を1回だけ施すのを1次のΔΣ変調とすれば,高次のΔΣ変調は,量子化雑音を高周波数側に移動させる効果がある。これにより,雑音をデジタル・フィルタ処理により効率よく除去できる。なお,信号を積分してから微分するという順番で処理を行っているため,現在ではΔΣ型A-D変換器をΣΔ型A-D変換器と呼ぶ場合がある。

図1 各方式における分解能と変換速度の関係
図1 各方式における分解能と変換速度の関係
図2 ΔΣ変調の概要
図2 ΔΣ変調の概要
(図1,2とも2005年8月15日号より抜粋)