通信チャネルが持つS/N と周波数帯域幅によって決まる,これ以上どうやってもデータ伝送速度を上げられない伝送容量の限界のこと。シャノン容量とも呼ぶ。チャネル容量の計算式で求まる。

 シャノン限界は1948年,32歳だったClaude E. Shannon氏が当時の米Bell Telephone Laboratoryで発表した論文「A Mathematical Theory of Communication」で初めて定式化した。同氏は,同じ論文で定義した「情報エントロピー」と呼ぶ抽象的な量を使って,理論的な展開からこの式を導き出した。ただし,この式は実用という立場からも極めて重要で,発表当時から今に至るまで,通信/伝送技術の開発現場ではシャノン限界に近い性能をいかに実現するかが技術開発の基本的指針となっている。

 その手段は,(1)伝送路自体を改善して雑音を下げるか,送信出力を上げるなどでS/Nを上げる,(2)周波数帯域幅を広げる――のいずれかに分けられる。

図 従来のシャノン限界とMIMO用に拡張されたシャノン限界。複数の送受信アンテナを用いるMIMOでは,従来のシャノン限界では不可能だった低S/Nや高い周波数利用効率での通信が可能になる。
図 従来のシャノン限界とMIMO用に拡張されたシャノン限界。複数の送受信アンテナを用いるMIMOでは,従来のシャノン限界では不可能だった低S/Nや高い周波数利用効率での通信が可能になる。 (日経エレクトロニクス2005年8月29日号より抜粋)