欧州が主導して策定した電気・電子関連の「機能安全(functional safety)」に関する国際規格で,2000年に発行された。電気・電子機器などのハードウエアおよびソフトウエアに関して,人命がかかわったり人が負傷したりする可能性のあるシステム,また人命に影響がなくてもその障害によって社会に多大な損害が出るものなどが対象となる。製品単体や組織の認証だけでなく,その組織を構成する個人も含む。主に,製造業向けの機械,交通輸送機関,化学プラント,医療機器などが相当する。ただし,機械だけで構成された装置などは対象外である。

 機能安全というのは,システムの安全性を確保する仕組みを「機能」として実装することで,リスクを軽減するという考え方。例えば,鉄道の踏切事故を減らすためには,立体交差の設置が根本的な対策となるが,これは「本質安全」と呼ばれる。一方,踏切の機能を工夫して事故のリスクを減らすのが機能安全である。

 ソフトウエアについては,100以上の手法の利用が推奨されている(図)。それぞれの手法を独自に実践する方法もあるが,規格認定済みの開発ツールなども登場している。例えば,自動コード生成ツールとしてはフランスEsterel Technologies, Inc.の「SCADE」,組み込みOSとしては米Wind River Systems,Inc.の「VxWorks」などがある。

図 各水準で必要な手法の例
図 各水準で必要な手法の例 (日経エレクトロニクス2005年12月19日号より抜粋)