フェライト・コアに二つの巻き線を施した構造のEMI(放射電磁雑音)対策部品のこと。主に,USB 2.0やPCI,LVDSといった差動信号を利用するインタフェース回路などで使われている。これらを採用する電子機器のEMI対策で,切り札的な役割を果たしている。

 コモンモード・チョーク・コイルが切り札たる理由は,その独特な雑音除去方法にある。信号の伝送モードの違いを使って除去するためだ。信号成分であるノーマルモードには悪影響を与えず,放射雑音の発生源となるコモンモードの成分だけを狙って除去できる。

 一方,フェライト・ビーズやEMIフィルタ,バイパス・コンデンサといった他のEMI対策部品は,信号の周波数特性を利用する。信号伝送に欠かせない低周波成分は残し,雑音源となる高周波成分だけを除去する。この方法だと,インタフェースが高速になればなるほど,この二つの成分の分離が難しくなる。