いわゆる背面投射型テレビ。DMD(digital micromirror device)や高温多結晶Si TFT液晶パネル(以下,透過型液晶),LCOS(liquid crystal on silicon)など,画素型の表示素子を利用した背面投射型テレビ(以下,画素型リアプロ)が,北米を中心に世界の市場で急激に売れ始めている(図1)。リアプロは,これまでも40インチ型を超えるような大型テレビの主役ではあった。しかし,光源にCRTを用いるものが中心で,必ずしもユーザーが満足する画質とはいえなかった。これに対して画素型リアプロは,固定画素方式であり,本来の解像度を維持しやすい。「安かろう,悪かろう」という従来のリアプロへのイメージを一新するものである。PDPテレビや液晶テレビに比較しても,少なくとも,正面から見る限り引けを取らなくなった。

 リアプロの開発担当者の多くは,画素型リアプロの方がPDPテレビや液晶テレビよりも映像が自然に見えると主張する。PDPテレビや液晶テレビの画素は,表示画面上で「RGB」のサブピクセルに分割されている。これに対し画素型リアプロは,表示画面(スクリーン)上で,RGBのサブピクセルの画像が合成された本来の画素が表示されるというのがその理由である。

 課題は,液晶/PDPテレビと比較して奥行きがあることと,視野角特性が悪いことなどである。視野角特性には,大きく左右視野角と上下視野角の2つがある。リアプロのスクリーンは通常,フレネル・レンズとレンチキュラ・レンズを備えており,フレネル・レンズで正面に向けられた入射光は,レンチキュラ・レンズによって左右方向に分散する(図2)。一方,上下方向にはスクリーンに拡散剤を混合することによって光を分散させる。拡散剤の混合量を増やすと,上下視野角が広がるものの,正面方向への光量が減り,輝度が落ちる。現在は,実用上より重要な左右視野角特性から改善が進んでいる。

図1 画素型リアプロで利用される主要な表示素子
図1 画素型リアプロで利用される主要な表示素子
図2 視野角特性
図2 視野角特性
(図1,2とも2004年3月29日号より抜粋)