耐圧を犠牲にすることなくオン抵抗を下げられるパワーMOSFETの構造の1つ(図)。ソース,ゲート,ドレインが垂直方向に並ぶこれまでの一般的な,いわゆる縦型パワーMOSFETのオン抵抗を下げるには,n型層の不純物濃度を高める必要がある。ただし,これまでの縦型パワーMOSFETではオフ時のソースとドレイン間で電界強度が強まる部分ができてしまい,耐圧が低下してしまう。この問題を解決する方法の1つとして浮上してきた。同じ耐圧でもオン抵抗を小さくできる結果,熱の発生は抑えられるため,ACアダプタといった機器の大きさを小さくできる。

 Super Junction構造を採ることで耐圧が向上する理由は,ソースとドレイン間の電界強度が一様になるからである。Super Junction構造では,従来構造のn型層の代わりにn型層とp型層を交互に並べており,空乏層はn型層とp型層の界面全体に広がる。電界はソースからドレインに向かう方向だけでなく,n型層からp型層に向かう方向にも存在する。それによって電界が特定の部分に集中しない。従来構造はp型層とn型層の界面で電界強度が強まっているため,絶縁破壊しやすかった。この構造が適応できる領域は主に,耐圧が数百Vの縦型パワーMOSFETの領域である。

縦型パワーMOSFETの断面構造
図 縦型パワーMOSFETの断面構造
2004年8月30日号より抜粋)