第三者機関による実証実験の定量的なデータを使い,消費者に対して製品の機能や性能を訴求するマーケティング手法。従来は食品や医薬品の分野で先行して採り入れられてきた。近年になって,エレクトロニクス分野の製品でもこうした手法の採用が進んでいる。実証実験による検証だけでなく,製品の中核技術のメカニズムを解明して消費者を納得させたり,第三者機関と開発段階から共同研究を行って成果を製品に盛り込んだりといったケースも出てきている。

 たとえばシャープは,空気清浄機に搭載する除菌イオン発生装置の「除菌イオン」を皮切りに,洗濯乾燥機の「Agイオンコート」,電気オーブン「ヘルシオ」の過熱水蒸気などの効果を,第三者機関による実証評価に基づいてアピールした。

 「除菌イオン」は,空気中に浮遊するウイルスを不活化する機能である。同社はこの機能について,2000年に発売した空気清浄機からアカデミック・マーケティングを採用している。当初は除菌イオンの技術を空気清浄機に採用するに当たり,目に見えない効果を分かりやすく示すことを狙い,外部の研究機関とともに効果の実証を試みた。その後,2004年11月には除菌イオンによる雑菌の活動抑制メカニズムを解明したと発表した。

 ダイキン工業は,2005年3月に発売したエアコン「Fシリーズ」において,外部の研究所との共同研究結果に基づいて製品開発を進める手法を用いた。エアコンで室温を制御して,睡眠時に理想的な体温状態に保つことで,深い眠りを得られるという。

 ダイキン環境研究所は2001年に,体温と眠りの深さの関係について研究発表している。この研究結果を製品に反映させようと,睡眠について研究する東京都老人総合研究所博士の青柳幸利氏と2003年から共同研究を始め,研究成果を2004年9月に公表した。その結果を基にダイキン工業がエアコンの制御用アルゴリズムを開発するなど製品化を進め,ダイキン環境研究所が試作機での効果を検証して販売に至っている。

表 白物家電メーカーが実施したアカデミック・マーケティングの主な例
(日経エレクトロニクス2005年5月9日号より抜粋) 白物家電メーカーが実施したアカデミック・マーケティングの主な例