DVD-Video用のコピー防止技術「CSS(content scrambling system)」を回避する代表的なソフトウエア。1999年,ノルウェーの少年がCSS暗号の解読に成功し,DVD-Videoのコピー防止機能を解除できる30Kバイトほどのソフトウエアとしてインターネットで公開した(図)。この結果,DeCSSは,瞬く間にインターネットで世界に拡散してしまい,MPAA(Motion Picture Association of America,米国映画協会)が同ソフトを配布する主要なWWWサイトを訴えたにもかかわらず,半ば地下に潜ったWWWサイトでいまだに配布が続く。CSSは,「Master Key」と「Disc Key」,「Title Key」と呼ぶ三つの暗号化鍵データを組み合わせて映像データを暗号化し,ディスクに格納する。DVDディスク装置と暗号の復号化器が互いに正しいことを認証してから再生を始める仕組みをとる。このため、たとえデータをハード・ディスク装置などにコピーしても,一般には再生できないはずだった。

 CSS暗号が解読されたきっかけは,パソコン上で動作するDVD再生ソフトウエアからCSSの暗号アルゴリズムが暴かれたことである。パソコン上で動作するDVD再生ソフトには,本来は逆アセンブルなどによるコードの解析を困難にする技術の導入が義務付けられる。ハードウエアで暗号を復号化するDVDプレーヤと違い,DVD再生ソフトの場合はコード解析によって暗号化アルゴリズムが漏れる恐れがあるためだ。だが,米Xing Technology Corp.が販売したDVD再生ソフトウエアがこの技術を導入していなかったため,ここからCSS暗号のアルゴリズムが漏れた。

 CSS以降のコピー防止技術には,DeCSS登場の反省を踏まえて,様々な工夫が凝らされている。例えば,CPPM(Content Protection for Pre-recorded Media)やCPRM(Content Protection for Recordable Media)では,鍵長が40ビットから56ビットになった。さらに,暗号が破られた時に備え,システムの更新や不正に利用された鍵データの廃止にも対応した。

DeCSSの画面
図 DeCSSの画面
1999年11月29日号より抜粋)