トランジスタの内部で漏れ出している動作とは関係のない電流のこと。この不要に漏れるリーク電流が,LSIの総消費電力のうち大きな比率を占めるようになってきた。高速マイクロプロセサから携帯電話機用LSI,FPGAといったさまざまな半導体で,リーク電流が大問題となりつつある。トランジスタの動作が高速になるほど,半導体の微細化が進むほど,リーク電流は大きくなる。

 リーク電流との闘いは今に始まったことではない。過去30年間以上もトランジスタを作製する際に生じた結晶や絶縁膜の欠陥を通して漏れる電流などを最小限に抑え込むべく,プロセス・デバイス技術者は常に努力を続けてきた。これらのリーク電流については,これまでの技術の延長によって今後も何とか対策できるメドが立っている。ではなぜ今,リーク電流の問題が急速に深刻化しているのか--。過去とは全く異質な問題が浮上してきたのである。

 1つは,しきい値電圧の低減に限界が見え始めたことである。これまでは,しきい値電圧を下げることによってトランジスタのオン電流を増やし,それによって高速化を達成してきた。ところがしきい値電圧が下がれば下がるほど,ソースとドレインの間を流れる不要な電流(サブスレッショルド・リーク電流)の量が増える。

 仮にサブスレッショルド・リーク電流の問題を克服できたとしても,その次には新たなリーク電流の問題が立ちふさがる。微細化によって,ゲート絶縁膜が薄くなりすぎることが原因で,ゲートに向かって電流が流れるようになる。これをゲート・リーク電流と呼ぶ。


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図 リーク電流
大きく3種類ある(a)。それぞれのリーク電流について,原因や顕在化する設計ルールなどを示した(b)。日経エレクトロニクス2004年4月26日号より抜粋)