光の干渉性を利用して,情報を乗せた信号光を感光材料に記録/再生する方式。一般に空間光変調器(SLM)によって光源から出た光を2次元バーコード状に変調し,信号光を得る。この信号光と,同じ光源から出た光を別経路で導いた参照光とを干渉させ,その干渉縞(ホログラム)を媒体中に記録する。再生時は,同じ条件でホログラムに参照光を照射する。これにより,信号光が復元されるので,固体撮像素子などで検出し,元のデータを得る。

 このホログラムは重ね書き(多重記録)が可能である。この性質により,現行のほかの記録再生方式に比べてケタ違いに高い記録密度にできると期待されている。多重記録の方法には,参照光の入射角度を少しずつ変えて重ねる「角度多重」や,記録位置を平面方向にズラして重ねる「シフト多重」のほか,波長を変える「波長多重」,位相を変える「位相多重」などがある。

 「究極の光メモリ」として何十年もの間,研究開発が進められてきたが,いまだ本格的に実用化された例はない。ここにきて「Blu-rayDisc」や「HD DVD」といった次世代光ディスクの次の世代を担う光ディスク技術として注目を集めており,ベンチャー企業のオプトウエアや米InPhase Technologies, Inc.などがそれぞれ2006年の商用化を目指している。これらの企業が開発している媒体は従来のようなサイコロ型ではない。CDやDVDのようなディスク状の媒体である。フォトポリマーを記録材料に使う追記型媒体で,ディスク1枚当たりの記録容量はいずれも当初200Gバイト程度になる予定だが,将来的には1Tバイト以上を目指す。

 オプトウエアは「コリニア・ホログラフィ」と呼ぶ方式を提案する。従来は信号光と参照光を別々に記録媒体に入射させ,その干渉縞を記録する「二光束干渉法」が一般的だった。コリニア方式は信号光と参照光を同軸上の1つのレーザ・ビームにまとめて媒体に照射できるようにした方式で,二光束干渉法よりも光学系を簡素化できる。さらにCDやDVDのようにサーボ情報やアドレス情報を刻んだ反射型のディスクを使えるため,現行の光ディスクのフォーカス・サーボやトラッキング・サーボの技術を使って媒体の偏心や面ブレに追従できる。

 InPhaseTechnologies社は角度多重とシフト多重の両方を使ってホログラムを重ねていく。二光束干渉法を改良した「Polytopic」方式を使う。所望のホログラム以外の情報を混合して再生しないように開口制御を行うことが特徴で,従来方式よりもホログラムをシフト多重で重ね合わせる際の間隔(シフト・ピッチ)を縮めやすい。すなわち,記録密度を高めやすい。

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