value chain

 一般に商品はサプライヤからメーカー,卸や小売り,販売,サービスに至るまで,それぞれの工程で付加価値を生み出しながら流れていく。この価値の連鎖をバリューチェーンと呼ぶ。

 利益を生み出すためには,このバリューチェーンが全体的にどのようになっているかを把握するのが重要となる。どの工程が価値を生みだすものなのかを見極め,無駄なものは削除することが必要になる。企業は価値を生みださない工程のアウトソーシングを検討することも必要となるかもしれない。

 バリューチェーンを最適化するために重要となってきているのが,必要な情報を素早く共有できる環境にすること。各工程において価値を高めようとした時に,異なる部門,あるいは他社からの情報をなるべくリアルタイムに共有し,業務に反映することは効果的だ。

 例えば,新規の製品を供給する際には,製造品質の向上が価値を高める。この場合は,生産技術部に早い段階で設計データを渡し,生産工程を検討してもらうことが,製品の価値を高めることに効いてくる。

 バリューチェーンの流れすべてを,一企業内で収めるのは不可能。そのためには,異なる企業間同士で情報を共有する必要が出てくる。バリューチェーンに含まれる企業の一つでも情報共有の輪から落ちてしまうと,それはバリューチェーンの最適化には結び付かない。

 この情報共有の手段として有効なのがインターネット。インターネットであれば,多額な投資をしなくても情報共有が可能になる。中小規模の取り引き先など,すそ野まで情報共有の輪を広げられる。

 一方,共有すべき情報の観点から見ると,最も重要なのは顧客情報である。最終的に価値を見いだしてくれるのは顧客である。顧客が何を望んでいるのかで,バリューチェーンのどの工程に力を注ぐべきなのかを判断すべきだ。

 例えば,顧客が迅速な納入を重視しているとしよう。これを満たすためには,設計段階ではATO(受注組み立て生産)を可能にするような設計にする必要があるかもしれない。生産技術部では生産工程を見直し,なるべく製造リードタイムを短くする必要があるかもしれない。購買部においては,納入リードタイムを短くしてもらうように,各サプライヤと接触しなくてはならないかもしれない。

 これらの対策を打つことによって,迅速な納入と言う顧客の要望に対して,それぞれの工程の価値が向上する。結果として企業にとって,利益を増大することに結び付くはずだ。

 バリューチェーンは,一度構築してしまえばそれで終わりというわけではない。製品のライフサイクルが短くなるにつれて,当然顧客の要望も変化してくる。顧客が何を望んでいるのかを常に吸い上げ,その要望に対して価値を上げるためにはどうすれば良いのかを,ダイナミックに変えていく必要がある。

 ここでも重要な手段として挙がってくるのがインターネットだ。特にOne to Oneサイトを提供し,情報を収集することは効果的。個々の顧客の顔が見えるため,例えばターゲットを絞った顧客のグループから,どのような要望が多いのかなどが判断できる。バリューチェーンの最適化を行ううえで,対策がたてやすい。

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