メールや掲示板,社内にある共有フォルダの文書などの各種情報を,集約してWebブラウザ画面に表示した窓口のこと。情報は文書だけでなく,グラフや画像など,さまざまな形式で表示する。英語を略してEIP(Enterprise Information Portal)と呼ぶことが多い。

 EIPを導入する最大のメリットは,その作業者が日常業務に必要な情報に一つの画面からアクセスできるようになるため,業務の効率が高まること。企業内にはさまざまな情報があふれているために,ともすると欲しい情報にたどりつくのに,多大な苦労を払わなくてはならない。また,それぞれのシステムにログインするのに,違ったIDとパスワードを利用するようだと,その管理が面倒になる。このような混乱を解消するのがEIPだ。

 企業にはさまざまな部門があり,さらに部門の中にはさまざまな役割がある。当然仕事の進め方は部門によっても,役割によっても異なる。このため,本当に必要な情報は個人によってバラバラだ。

 これに応えるために,EIPではユーザーごとに異なる画面を提供するパーソナライズ機能を持つ。例えば,メールボックスや社内の掲示板や電話帳などは全部門に共通で表示する。そのほか,日程を表示する機能であったら,設計部門では開発日程が重要であり,生産部門では工場の小日程が重要だ。一方,管理者から見れば,大きなプロジェクトの日程がより重要となる。このように,個々のユーザーごとに必要とする情報をEIPでは提供する。

 EIPでは通常,画面が小窓に分割されており,それぞれの小窓で違った情報を提供する。小窓に表示される情報は,何も文章情報だけではないのが一般的。表計算ソフトで作成されたグラフや表,検索画面などが表示される。情報の共有化の手段としては,これまでグループウエアなどを導入する企業が多かったが,グループウエアでは扱う情報が文章情報が主であった。適切な情報を適切な形態で提供するのも,EIPの一つの特徴だ。

 EIPは比較的新しいコンセプトであり,導入している企業はまだ少ない。しかし,業務改革の中核を成すものとしてEIPを位置付けている企業も登場してきている。

 EIPでは,情報を効率よく共有できるために,ナレッジ・マネジメントには有力なツールと言える。実際にナレッジ・マネジメントの実現の手段として,EIPの構築を目指した企業は多くある。

 今後の製造業を考えた時に,EIPに欠かせなくなるのがコラボレーション機能であろう。設計部門であれば,他の設計部門や他社の設計部門とのコラボレーションが必ず必要であり,そのためにはコラボレーションツールの利用もEIPから利用可能になるべきだ。また生産部門なら,例えば部品メーカーの生産状況とのコラボレーションにより,サプライチェーンの最適化を図る必要がある。このためには,EC機能もEIPから利用できるようになるべきだ。

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