トヨタ自動車や同グループ会社(以下,トヨタ)の強さを支えるトヨタ「生産」方式,トヨタ「改善」方式,トヨタ「経営」方式の総称。これらのうちのいずれかを指してトヨタ方式ということも多い。

 トヨタ方式に詳しいゴールドライツ代表取締役の金田秀治氏によると(1)トヨタ生産方式とは「かんばん方式」に代表されるトヨタの「ものづくり」の方式(2)トヨタ改善方式とは「ムダの徹底的排除」に代表されるトヨタの「改善」の方式(3)トヨタ経営方式とは「変化し続ける経営こそが最強の経営である」という経営思想——のことである。さらにトヨタ改善方式には,改善対象を現場の作業とする「現場戦略」展開のための方式と,改善対象を部門システムとする「部門戦略」展開のための方式の2種類がある。前者は「ムダの徹底的排除」を,後者は「ありたい姿」を追求するものだ。

 トヨタは業界横並びには甘んじず「ありたい姿」に向かって「業界常識を変えていく」ことを強く意識している。そこで重視しているのが,作業や工程だけでなく部門システムも改善できる知恵を出し合うこと。知識や技能の勝負ではどうしても業界横並びに陥りやすいため,トヨタは知恵で勝負しようと考えている。

 そして,そうした「ありたい姿」の追求を可能としているのが「『ダメモト』でチャレンジし続ける『変化持続型』の活動」(金田氏)である。すなわち,トヨタでは今日の業績向上のための活動を従来の問題解決型ではなく「ありたい姿」に向かってチャレンジするイノベーション活動として行うことで,「明日の準備」を日常の業務を通じて実行できるようにしている。

 トヨタ「改善」方式の優れた点の一つは「知恵を出させる『しくみ』」を持っていること。まず,知恵を出さないと困るしくみを盛り込んでいる。それは「ニンベン付きの自働化」と呼ばれるもので,異常が発生したら生産活動をいったん停止するというものだ。「生産現場にとって生産予定量の未達成は最悪の事態。解決しないと困るため,知恵を出すようになる」(金田氏)。さらに,知恵を出したら,まずはやってみるという姿勢がさらに知恵を出させる。もちろん最初からうまくいく知恵はほとんど出ない。しかし,それを実行することで「こうすればうまくいくかもしれない」という「後知恵」が出てくる。それを繰り返すことで,より優れた改善策が出来上がっていく。現実の問題に対して「なぜを5回繰り返す」という姿勢の徹底でも知恵が出てくる。「通常,3回目までの考えるは,従来の知識・技能をベースとしたもの。だが,4,5回目になるとそれでは答えが出せなくなる。そのため,知恵を出さざるを得なくなる」(金田氏)。

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