素子遅延に比較して配線に起因する遅延が支配的になるにつれ,配線に関連する抵抗/容量成分(RC)などの寄生パラメータの抽出精度向上が重要となっている。抽出したパラメータは,信号波形の精度(シグナル・インテグリティ)や遅延時間の解析に使われる。

 これまで,こうしたパラメータの抽出は,レイアウト検証ツール(DRC,LVS)のサブ機能として実現されている例が多かった。すなわち,レイアウト検証ツールの前処理で復元したトランジスタ接続情報を基に,配線の各分岐点間ごとに,他のマスク層との重なりや隣接配線との間隔を見ながら容量(C)を計算したり,単位長抵抗を基に抵抗値(R)を計算していた。

 しかし,この手法では配線図形の重なりや隣接状況といった2次元的な情報からR/Cを求めているため,配線幅に比べて膜厚(配線の高さ)が大きくなっている最近の半導体プロセスでは,抽出結果に大きな誤差が生じている。

 3次元的な抽出方法としては,電磁界解析ツール(フィールド・ソルバなど)が古くから知られているが,解析に時間がかかる。そこで,あらかじめ典型的なパターンに対する抽出をモデル/ライブラリ化しておき,パターン・マッチングでそれらを参照しながら、抽出計算の高速化を図るツールが複数発売されるようになった。モデルの確認や精度を上げるために,実配線パターンを作り込んだテスト・チップを作成し,その実測データを基に抽出モデルで用いるパラメータの合わせ込みを行う手法が実用化されている。


(99. 9. 6更新)

このEDA用語辞典は,日経エレクトロニクス,1996年10月14日号,no.673に掲載した「EDAツール辞典(NEC著)」を改訂・増補したものです。