HDL graphically entry tool

 HDLのグラフィカル入力ツール(HDL graphically entry tool)は,RTL(register transfer level)記述を図形を使って入力するためのツールである。ハードウエアをHDL(hardware description language)という言語で表わすことには抵抗があるという技術者などを狙う。

 具体的には,状態遷移図やブロック図,フローチャート,および真値表などを入力すると,VHDLやVerilog-HDLのRTL記述を出力する。このRTL記述は,市販のHDLシミュレータで検証したり,論理合成ツールに入力することができる。

 ここ3~4年で市販のHDLのグラフィカル入力ツールは守備範囲を広げている。上述した基本的な機能に加え,HDLシミュレータを組み込んだり,デバッグ機能,テスト・ベンチ(HDLシミュレータへの入力パターン)作成支援機能(関連ツール:テストベンチ作成ツール),論理合成の制約条件(スクリプト)の作成支援機能,Verilog-HDL/VHDL言語変換機能,HDLデータの管理機能などが追加されている。HDLの生成という単機能のツールから,HDL関連の総合設計環境のフレームワークへと位置付けが変わってきたわけだ。

 なお,HDLグラフィカル入力ツールは,登場した当初はESDA(electronic system design automation)と呼ばれていた。しかし,この名称では実際に何をするためのツールかあいまいなため,最近はESDAツールとは呼ばれなくなった。

論理合成の登場で注目率が上昇

 HDLのグラフィカル入力ツールが市場に姿を現したのは1992年~1993年であるが,まだ改良の余地がある。特に論理合成可能なRTL記述の質に不安が残る。これまでHDLグラフィカル入力ツールが生成したRTL記述では,速度やチップ面積で満足のいく回路が合成できないことが少なくなかった。このためさらに,合成向きにRTLコードを最適化するツールを,オプションとして供給するベンダも出てきた。

 現在のEDA技術レベルでは,まだRTL記述を設計者が用意する必要がある。また,日本の設計文化ではHDLで表現したRTL記述が仕様には成り得ないことを考え合わせると,今後もHDLのグラフィカル入力ツールはそれなりに広がりをみせるとみられる。


(99. 9. 6更新)

このEDA用語辞典は,日経エレクトロニクス,1996年10月14日号,no.673に掲載した「EDAツール辞典(NEC著)」を改訂・増補したものです。