私とiTMSの25日
私とiTMSの25日
昨日,米Apple Computer社の音楽配信サービス「iTunes Music Store(iTMS)」の日本版で,瞬く間にヒットチャートを駆け上がったアルバムがある。「The Complete Jazz at the Philharmonic On Verve 1944-1949 」。1940年代の演奏を集めた,CD10枚組のジャズ・アルバムだ。いかにもマニア向けに見えるこの作品が,いきなり人気を博したのは何故か。答えは簡単。139曲に及ぶ楽曲全体に付いた値札が,たったの1500円だったからだ。
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私は日々,相当な量の音楽を摂取している。ヒップホップからクラシックまで,気になったものは一通り聴く。ところが,ジャズにはさっぱり縁がなかった。昔は「30歳になったら聴こう」と何となく思っていたが,気が付けば不惑が目前である。iTMSの思わぬプレゼントは,10年遅れで巡って来た運命の出会いなのかもしれない。
iTMSが始まっておよそ25日。今では購入した曲の容量は1Gバイトを超えた。1万飛んで数百円で210曲余り。昨日のアルバムの効果が大きかったとはいえ,短期間にこれほど買ってしまうとは,自分でも意外である。振り返れば,iTMSを使い始めた当初の感想は失望に近かった。100万曲を用意したと言う割には,欲しい曲が見つからない。正直このままじゃ,すぐに飽きるだろうと思った。ところが,ふたを開ければこの始末である。
改めて曲目を眺めて,ほとんどが衝動買いであることに気が付いた。多くは,CDだったら買っていなかっただろう曲である。それぞれの曲を購入したキッカケは様々だ。機会があれば聞いてみたかった曲,何となく気恥ずかしくてレジに持っていけないヒット曲,知っている曲ばかりのベスト盤に紛れ込んだ未発表曲,高校時代に聞いた思い出の曲…。
ただし,いずれも最後の一押しは,「これくらいなら失敗してもいいか」と思わせる価格設定や,買った瞬間に手に入る即時性にあったように思う。缶ジュースを飲んだり,雑誌を買ったりする感覚で,ついつい手を伸ばしてしまった。今日のような破格の値段ならなおさらだ。2チャンネルの書き込みを見ると,同じような人が結構いるらしい。
自分の行動を振り返る限り,iTMSをはじめとする音楽配信サービスは,音楽の市場を大きく広げる要素を多分に含んでいそうだ。もちろん,始まったばかりのサービスに対する物珍しさで買ってしまったり,買う気満々でいたところに目当ての曲が見あたらず,別の曲で鬱憤を晴らした面があることは否めない。新譜が続々と登場し,未参加のレコード会社が提供を始めるなど,品揃えが豊富になれば,これまでに買ったような曲には目が行かなくなるかもしれない。
ただしそれは,代金を支払うコンテンツが変わるだけで,自分はやっぱり散財してしまうと思う。少なくとも,CDを買う場合と比べて,音楽に費やす額が減ることはなさそうだ。現状の品揃えでこれなのだから,欲しい曲がズラリと揃ったときに一体どうなるのか,ちょっと怖い。1ユーザーとして,未参加のレコード会社には一日も早くコンテンツを提供して欲しいとずっと思ってきたが,家計を脅かしかねない欲望に歯止めをかけてくれることに,むしろ感謝すべきなのかもしれない。



















