2011年7月24日にアナログ放送停波に向けて〜「テクノロジー・サミット」報告(5)
2011年7月24日にアナログ放送停波に向けて
〜「テクノロジー・サミット」報告(5)
2003年12月に地上デジタル放送が始まり,2年半を経過した。電子情報技術産業協会(JEITA)の統計によると,2005年5月末までの地上デジタル受信機器全体の出荷台数累計は463万台となり,まずは順調な滑り出しのようだ。行政/放送業界/家電メーカーの次の関心は,計画通りに6年後の2011年7月24日にアナログ放送を全面的に停波できるのか,に移っている。
7月12日に開催した「テクノロジー・サミット」の事前アンケートでは,厳しいという見方が多いことが明らかになっている。今の勢いで普及が拡大していけば可能という回答は13%に過ぎなかった。
アナログ放送を停波できるか |
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アナログ放送の停波についての位置づけは,時代とともにどんどん変わっている。もともとの地上デジタル放送導入シナリオはもう少し緩やかなものだった。1998年に出された郵政省の「地上デジタル放送懇談会」の報告書でも2010年をメドにアナログ放送を停波するとしていたが,(1)世帯普及率が85%以上,(2)現行のアナログ放送と同一放送対象地域をデジタル放送で原則100%カバー,という条件を付けていた。この時点では,実際にアナログ放送を停波するかどうかは消費者がデジタル放送を広く受け入れるかどうかにかかっていた。しかし,2001年の電波法改正で2011年にアナログ放送を終了すると決めた結果,消費者は2011年までに半ば強制的にデジタル・テレビあるいはチューナーの購入を迫られることになった。デジタル・テレビの位置づけが,この法規制によってガラリと変わったのである。
そして今,放送業界やテレビ・メーカーにとっても,デジタル・テレビの位置づけが大きく変わろうとしている。デジタル・テレビの普及に向けて,「2011年にアナログ放送が終了する」ということを消費者に周知を始めた結果,仮にそれを実行できない事態になると,結果的に消費者をだましたことになるということである。2001年の段階では行政の政策目標で放送業界/テレビ・メーカーはそれに協力するという位置づけだったが,いまや放送業界/テレビ・メーカーにとっても2011年までにデジタル放送受信機を普及させることが至上命題に変わったのである。
ただし,2011年までにデジタル放送受信機を普及させるのは至難の業である。現在,目標として1億台という数字が掲げられているが,これを達成するためには2010年ころに年間2000万台の受信機の出荷が必要となる。テレビ・メーカーにとっては,年間2000万台のデジタル・テレビを国内市場向けに製造するのは困難である。国内のテレビ市場は年1000万台であり,それを大幅に越える量の製造に向けた設備投資を行うと,2011年移行の工場稼働率が一気に低下してしまうためである。2010年頃の市場拡大は需要を先食いしている部分もあり,その反動を考えるとなおさらだ。そのため,外付けのセットトップ・ボックスが安価に供給されることが重要になる。テクノロジー・サミットでも,1万円を切るセットトップ・ボックスの可能性について活発な議論がなされた。
アナログ放送の停波に向けては,もう一つ課題がある。安価なCRTテレビへの対策である。JEITAの統計によると,地上デジタル・テレビのカラー・テレビ全体に占める割合は2005年5月単月で32.4%まで伸びてきているのに対し,CRTテレビ全体に占める地上デジタルCRTテレビの割合は4.5%にとどまる。安価なCRTテレビへのデジタル・チューナー搭載比率が上がらない限り,デジタル放送への完全移行は難しい。この点については,2009年のアナログ放送停波を目指す米国と同様に,何らかの形ですべてのテレビ受像機にデジタル・チューナー搭載を義務付ける行政上の判断が必要になると見られる。いわゆる日本版の「Powell Plan」の実行である。実際,テクノロジー・サミットの事前アンケートでも,「そこまで対策すればアナログ放送の停波は可能」という見方が2/3を占めた。
なお,今回の事前アンケートのフリー記入欄では,「どうしてもデジタル・テレビを購入できない視聴者に向けて,資金援助を含めた何らかの対策が必要」という意見が多数寄せられた。「せめてNHKだけでもアナログ放送を継続すべき」という見解もあった。



















