Cellが内蔵するSPEはなぜ,8個なのか
ソニーとソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE),東芝,米IBM Corp.が開発した次世代マイクロプロセサ「Cell」は,マルチコア型のアーキテクチャを採っています。Power型のCPUコアが1つ,それにSPEと呼ぶ信号処理プロセサ用のコアが8つ,合計9個のマルチコア構造です。では,どのような背景からSPEの数が8個に決まったのか——。
半導体を設計する上で重要な要素は,どのような微細加工技術を用い,チップ面積をどこまでに抑えるのかという点にあります。プレイステーション2が発売されてから既に5年が経過するSCEにとっては,次世代ゲーム機をそろそろ実用化したいところです。では現時点において安定しつつある最先端の半導体技術といえば90nmルールです。では90nmで製造するのに,コスト的に妥当なチップ面積はいくつになるのか−−。当初の目標は185mm2だったそうです。ところが,8個のSPEを内蔵するとなれば,この目標値を大幅に上回ることがわかり,開発チームは6個のSPEとすることを検討したとか。
ここで登場するのが,あの久多良木健氏です。現在はソニーの副社長の座にいますが,いわずと知れたプレーステーションの生みの親,今回のプロジェクトも陣頭指揮しています。その久多良木氏は,この提案を一言で却下,「コンピュータの世界,2のべき乗じゃなきゃ,これは美学」と提案を退け,最終的にこの構成に決まりました。チップ寸法は221mm2と,予定よりも大きくなりましたが,苦しい時にはこだわりを優先するというのが久多良木氏の持論です。現場があごを出しそうになったところにムチを入れ,理想を追求する--こういう厳しい技術マネジメントに,MOT(management of technology)の本質を感じます。
さて,日経エレクトロニクスは最新号(2005年2月28日号)にて,このCellをテーマにした特集記事を掲載しました。Cellが発表されたのが米国時間で2月7日。新鮮なうちに,最新の情報を詳しくお届けしたいとの思いから,緊急特集を組んだ次第です。久多良木氏のインタビューに加えて,開発に携わったSCE/IBM社/東芝のエンジニアによる寄稿論文を交えて33ページで構成しました。是非,熟読していただければと思います。メインフレームからゲーム機にテクノロジー・ドライバが変わりつつあることを実感していただければ幸いです。


















