海外転職推進論に賛成します
「結局さ,大抵の人は英語を多少使えりゃ,現地の従業員を圧倒する仕事ができるんだよね――」。64歳になるというその方(以下,彼)はさらりと言った。彼は台湾に住み,台湾と中国南部の電子機器の工場に技術指導をしている。彼は,中国語をほとんど理解できない。学ぶ気もあまりない。しかし,不良率の低減に対する執念と実績が,彼の下へ仕事を舞い込ませ続けている。
彼はこうも言った。「日本では,中高年のエンジニアが『仕事がない』なんて嘆いているらしいけど,時代が変わったんだからさ,海外に行けばいいんだよ。海外で個々のエンジニアが担当する職務は通常,日本より格段に狭い。そんな中であれもこれも知っている日本人エンジニアは,バイタリティさえあれば“スーパーマン”になれるんだ」。
過去手掛けた特集の取材では,海外転職をしようする人は明らかに少数派だった。親の介護といった事情を抱えている場合にはやむを得ないが,そうでない場合も消極的な原因とは何か,私は彼と話したものの結論を出せなかった。それには,私の他者に対する想像力の欠如が影響したかもしれない。私は少数派である。良い思い出ばかりの日経BPをあえて辞めることにし,今月から台湾に住み始めた。
私は今,彼の「海外に行けばいいんだよ」という意見に大分うなずける。台湾での日常生活が予想をはるかに超えて快適だからだ。コンビニや外食チェーンをはじめとした日本の流通業があらかた進出していること(特にダイソーの存在がありがたかった),そして何より人々のモラルが日本に似ていて,なおかつ高いことが,その原因だと思う。
もちろん,やりたい仕事をやれる幸せだって味わえる。彼は電子機器の製造やプリント基板の設計に関係する仕事,私の場合は台湾系を中心とするODM/EMS企業などに対する深い取材をかねてしたかった。いずれの仕事も日本で実現するのはかなり難しい。
最後に唐突ではありますが,一言お礼を申し上げさせてください。日経エレクトロニクスにおいて私が多様な記事を手掛けられたのは,ひとえに読者の皆様のご協力とご支持があったためです。本当にありがとうございました。今後は台湾での取材結果を,寄稿という形で日経エレクトロニクスやTech-On!でご報告します。どうかよろしくお願いします。


















