ほぼ“全部入り”となった「らくらくホン」
「かなりハイ・スペックになったなあ。ほぼ“全部入り”やん」
2010年7月21日に,NTTドコモと富士通が発表した携帯電話機「らくらくホン7」(型番は「F-09B」)の発表会における筆者の感想です(Tech-On!の関連記事1)。読者の多くがご存じの通り,らくらくホンは主にシニア層をターゲットにした携帯電話機のシリーズ。1999年6月に発売された初代らくらくホン「P601es」から数えて,今回のらくらくホン7は17代目の端末になります注1。NTTドコモによると,初代から16代目の「らくらくホン6」(型番は「F-10A」)までの16シリーズの累計販売台数は,2010年6月末の時点で1780万台。富士通は,2010年度における同シリーズの販売目標を200万台としており,累計2000万の大台に達成するのは時間の問題かもしれません。国内における携帯電話機の販売が減少している中,いわゆる「ガラパゴス・ケータイ」の中で,最も成功を収めている一つといえるでしょう。
注1)らくらくホン シリーズの端末開発は,初代のP601esのみ松下通信工業(現 パナソニック モバイルコミュニケーションズ)が手掛けた。以降の端末は,すべて富士通が手掛けている。
今回のらくらくホン7は,筆者の冒頭の感想通り,かなり高機能化が図られています。搭載する液晶パネルは,メイン画面が約3.0型で800×480画素となり,国内の他の端末に対して遜色ないレベルといえます。さらに,サブ画面の液晶パネルは約2.0型で240×320画素であり,国内端末では珍しいカラー表示に対応します。ハードウエア機能ではこのほか,約810万画素のCMOSカメラや,ワンセグ受信機能,IPX5/IPX7/IPX8等級の防水機能,IPX5等級の防塵機能を備えるほか,下り最大7.2Mビット/秒のHSDPAやGSMによる海外ローミングにも対応します。ソフトウエア機能では,NTTドコモが運営する情報提供サービス「iコンシェル」や2010年夏商戦モデルから始まった健康支援サービス「iBodymo」に対応するほか,「デコメール」の作成機能などを備えます。国内ケータイとして対応していない主だった機能は,「FeliCa」による電子決済やBluetoothによる無線通信機能くらいな気がします注2。
注2)NTTドコモの製品サイトとみると,らくらくホンが対応していない機能としては,「Music&Videoチャネル」や「iアプリオンライン」「着うたフル」などがある。
もちろん,今回のらくらくホン7は,最新機能が数多く搭載されているNTTドコモの「PRIME」シリーズと比べた場合,見劣りするのは否めません。例えば,同じ富士通製の2010年夏商戦モデルである「F-06B」は,1920×1080画素の「フルHD」動画が撮影できるほか,無線LAN機能により端末をアクセス・ポイントとして利用できます(Tech-On!の関連記事2,関連記事3)。さすがにらくらくホン7は,ここまでの機能は備えていません。ただし,その他の機能において,大きく見劣りする機能は少ない気がします。通信事業者各社が導入した2年契約を伴う販売制度である,いわゆる「2年縛り」が明けたのに,新機種を購入できていない筆者のケータイに比べたら高機能だと断言できます。
しかも,らくらくホン シリーズは,高機能化された機能の多くを,シニア層に利用してもらうための工夫が施されています。今回のらくらくホン7では,例えば下り最大7.2Mビット/秒のHSDPAサービスは,Webサイトを閲覧しないユーザーにとっては,無意味な機能になります。このため,筐体下部に搭載した専用ボタン「らくらくサイトボタン」を配置し,ボタンを押すと天気やニュースなどの情報をすぐに調べられるiモード専用サイト「らくらくiメニュー」に接続できるようにしています。カメラ機能については,自動認識機能にQRコードの認識が追加,カメラ・レンズに指がかかった場合には画面に注意喚起メッセージが表示されます。iコンシェルについても,メイン画面だけでなく,サブ画面でも表示できるようにしたことで,筐体を明ける必要がありません。これにより,サブ画面をカラー表示に対応したことが無意味ではなくなります。こうした,一つひとつの工夫により,徐々にらくらくホンの高機能化を図ってきた結果が,今回のほぼ全部入りの実現につながったといえそうです。富士通は発表会の度に,「らくらくホンの開発は決して楽ではない」と言っているのも頷けます。テレビやレコーダーといったAV機器にも,このような発想を盛り込めば,新たなユーザー層を取り込めるのではないでしょうか。
ただし,そんならくらくホン シリーズも一つの岐路に差し掛かっているのは事実のようです。今回の発表会で富士通は,「らくらくホンに,機能をどこまで盛り込んでいくのは難しいところ」と話していました。既に,多くの機能が盛り込まれただけに,今後の進化の方向性が気になるところです。これまでらくらくホン シリーズは,半年〜1年に1機種の割合で新モデルが発表されていました。エレクトロニクス業界では,数少ないシニア層向けのヒット製品だけに,次期モデルにも一体どんな工夫が盛り込まれるのか,期待しています。


















