うまくいかなかったJobs氏のデモ
通常であれば,Steve Jobs氏のプレゼンテーションは問題なく進む。だが,新型「iPhone 4」を発表した「Apple Worldwide Developers Conference 2010(WWDC)」の基調講演( Tech-On!関連記事)で, “事件”が起きた。iPhone 4に搭載した新しいディスプレイ技術を説明するために,新聞のWeb記事をダウンロードしようとしたとき,なかなかダウンロードが進まなかったのである。「ここ(基調講演を行った米サンフランシスコ市のMoscone会館の講堂)のネットワーク状態は,いつも予測不可能だ」とJobs氏はつぶやいた後,壇上からこう懇願した。「今,皆さんが無線LANの利用をやめてくれたら,とても助かるんだけど…」。
これを聞いた聴衆からは,笑い声が漏れた。iPhoneを扱う携帯電話事業者AT&T Inc.の第3世代(3G)ネットワークへの接続が不安定なこと(特にサンフランシスコ市内)は,米報道機関がしばしば取り上げているほど。そんな事実が,笑いの裏にはあったのだろう。実際,Jobs氏は無線LANを利用してネットワークに接続していることを聴衆に強調した。ただ結局,ダウンロードがうまくできなかったため,代わりに携帯電話機に保存してある写真を表示してプレゼンした。
その後,Jobs氏は舞台から去り,しばらくの間は無線LANを使わないプレゼンが続いた。やがてJobs氏が再び舞台に登場し,こう語った。「先ほどのデモがうまくいかなかった原因が分かった。どうやらこの会場内では,570個もの無線LANベース・ステーションが起動しているようだ」。さらに,同氏はこれらのベース・ステーションのうち数百台は,米Novatel Wireless, Inc.製の携帯型無線LANルーター「MiFi」だという。そこでJobs氏は,あらためて無線LAN接続をやめてくれるように頼むとともに,「もし皆さんの隣に座っている人が無線LANを使っていたら,やめてくれるように言って下さい」とも呼びかけた。さらには,Apple社の社員が無線LAN接続をやめてくれたかどうか確認するために,会場内を見回ったほどである。
WWDCに参加する人たちの中には技術好きなオタクも多いので,今回の事件は例外だったと言える。だが,Jobs氏は現状の無線LANについて,一つの弱点を指摘したことになる。あらゆる機器に無線LAN機能が搭載されるようになると,干渉が起きたり,接続可能な帯域幅が不足したりする可能性が高まる点だ。はっきり言えることは,今回の発表のようなオフィシャルなプレゼンテーションで無線LANを使うことは,非常に危なっかしいということだろう。



















