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日経エレクトロニクス雑誌ブログ

「iPad」とはいったい何だと思いますか

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2010/03/12 10:47
山田 剛良=日経エレクトロニクス

「Knowledge Navigatorを思い出した」
「だからあれはJobs流のNewtonだってば」
「それを言うなら初代Macintoshの作り直しじゃないかな」

 2010年1月27日の発表以来,友人や取材先と話していて,本題が一段落すると必ずといっていいほど,米Apple Inc.の新製品「iPad」の話題になります。iPadは面白いね,売れるかね,ライバルは何だろう,といったおそらく世界中で交わされているような,たわいのない話をいろんな人としてきたわけですが,それでとても興味深く思っているのは,「iPadとは何か」という認識というか理解が,人によってかなりブレている点です。

 割と多いのは,米Amazon.com, Incの「Kindle」などと比較しつつ新世代の電子書籍リーダーとみなす意見や,いわゆる「ネットブック」と比較しつつ,インターネットへのアクセスを主目的とした小型で低価格なパソコンの一種と考える見方です。インターネットの各種サービスのうち「エンターテインメント」の部分だけを切り取ったビューワーと見る意見も聞いたし,「ニンテンドーDS」や「PSP」と比較して,ゲーム機としての側面を語る人もいました。クリエーターのための最小限の道具という意見もありました。「要するにでっかいだけのiPhoneだよ」と言い放った人もいたな,そういえば。

 もちろん,どれが間違っているというわけではないと思います。iPadはそれらの要素をすべて内包している不思議な製品だからです。Apple社自身,この製品について「革命的で魔法のようなデバイス」とか,「ウェブ,メール,写真のための最高のデバイス」というふうに自社のWebサイトで形容しているくらいで,用途をあまり明確にしていません。

 ちょっと面白かったのは,古株のAppleファンである友人たちの意見です。90年代にMacintosh専門誌という奇特な媒体で仕事をしていた関係(そのあたりに触れたNEブログ)で,私にはその種の友人がけっこうたくさんいます。彼らとiPadの話をすると,決まって「既視感を抱いた」という話になるのです。そこで彼らが挙げるのが,「Knowledge Navigator」や「Newton MessagePad」,あるいは「Macintosh 128K(初代Macintosh)」です。そういわれると,iPadにはこれらの製品を彷彿させる共通項がたくさんあるように思います。

 「Knowledge Navigator」は,1988年に当時Apple社(当時はApple Computer, Inc)のCEOだったJohn Sculley氏が「20世紀中に作る」と発表したコンセプト機です。音声認識とタッチ・パネルで操作する書籍型コンピュータで,Apple社自身が作った6分弱のビデオという形で発表されました(Knowledge Navigator)。

 そのKnowledge Navigatorを具現化したと言われるのが,元祖PDAである「Newton MessagePad」(Newton)です。これはペン操作型の手のひらサイズの小型コンピュータでした。手書き文字認識やジェスチャ操作などを売りに1993年に登場しましたが,商業的にはあまり成功したとは言えません。

 古株のAppleファンには常識なのですが,Knowledge NavigatorやNewtonは,Apple社の創業者で現CEOのカリスマ,Steve Jobs氏がApple社を去った後に作られた製品です。Sculley氏を招聘したのはJobs氏自身でしたが,次第に対立し,社内で孤立したJobs氏が起死回生を狙って作ったのが,初代の「Macintosh」(Macintosh 128K)でした。Macintoshの販売が商業的に大失敗したことで,Jobs氏はApple社を去る結果になりました。

 私見ですが,これらの製品の最大の共通項は「人間の知的作業を手助けする小型コンピュータの決定版を創りたい」という強い志だと思います。その点でiPadは「AppleのDNA」を継ぐ正当な後継者であると思います。仮に大ヒットしたら,Mac ProやMac Bookといった現在の主力製品の市場を奪う結果になりかねない製品を自ら出すApple社の勇気には拍手を送りたい。

 その一方で,志が高すぎ,あれもこれもと欲張りすぎた結果,具体的な用途が不明確になっているきらいもあるように思います。一般的に言って「用途不明の機械」は売れにくい。古株のAppleファンの友人が心配していたのはこの点です。「俺らは買うからね,だから最初はそこそこ売れると思うよ。けど続くかなぁ。もたもたしているうちに,他社にマネされちゃうんじゃないかなぁ」。結果的に「未来を創り,商売で負ける製品」の系譜に連なるのではないか,というわけです。

 果たして古株のAppleファンたちの心配は杞憂に終わるのでしょうか。iPadは2010年4月3日に北米でまず発売されます。日経エレクトロニクスでもいち早く入手してその出来映えを解析し,みなさんにお届けする予定です。分解? もちろんですとも。

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