MWCに見る“スマートフォン大競争”の行方
2月15〜18日にスペイン・バルセロナで開催された携帯電話関連の展示会「2010 Mobile World Congress」(MWC2010)に参加しました(Tech-On!の特設サイト,日経エレクトロニクス 2010年3月8日号解説記事の紹介サイト)。開催前日の14日には雪がちらつき,期間中は最終日(18日)の午後以外は晴れ間が見られないほど,雨または曇りばかり。現地スペインの方も「ここまで雨が続くのは珍しい」と苦笑いするほど。「スペインって,太陽の国じゃないのか」と突っ込みたくなる1週間でした。
とこれ以上,私のスペイン滞在記を書いても仕方がありませんので,本題に戻ります。MWC2010会場における端末の話題は,「スマートフォン」注1)一色でした。韓国Samsung Electronics Co., Ltd.や韓国LG Electronics,Inc.,米Motorola, Inc.,日スウェーデン合弁Sony Ericsson Mobile Communications ABといった大手端末メーカーから,台湾Acer Inc.,中国Haier Telecom社などの新規メーカーに至るまで,発表された新機種はスマートフォンだらけ。私自身,「スマートフォン大競争」(2010年1月25日号)で,タイトル通り“世界中でスマートフォンを巡る大競争が始まる”との記事を執筆しましたが,想像以上の争いが始まっていることを再認識させられました。
注1)スマートフォンはさまざまな定義がありますが,2010年1月25日号の特集や2010年3月8日号の解説記事では,音声通話機能やデータ通信機能を持ちながら,パソコンに近い使い勝手を実現し,アプリを導入して機能を追加できるほか,Webアプリをパソコンと同様に実行できるなどの特徴を持つ端末としています
MWC2010で明確になったのが,スマートフォンの差異化ポイントとして,大手端末メーカー各社がユーザー・インタフェース(UI)を掲げていること。先陣を切ったのは,Sony Ericsson社が2009年11月に発表した「XPERIA X10」(国内名は「ドコモ スマートフォン Xperia」)です。この端末には,電話や電子メール,SNSといった各種のコミュニケーションの履歴を同一画面上で統合的に管理できる「Timescape」と呼ぶ独自の操作画面を備えます(Tech-On!の関連記事1,関連記事2)。MWC2010で各社が発表した新機種では,統合できるコミュニケーション機能に差はありますが,Samsung社は「Social Hub」,Motorola社は「MOTOBLUR」,台湾High Tech Computer Corp.(HTC社)は「HTC Seanse」と呼ぶ独自のUIを搭載しています。液晶パネルやカメラなどの高性能化による差異化が難しくなりつつある現状を考えると,2010年はUIの改良が競争軸の一つになるのは間違いなさそうです。
Microsoftに注目
一方,ソフトウエア基盤に目を向けると,MWC2010で発表されたスマートフォンの新機種では米Google Inc.の「Android」の採用が多数を占めていました。米Gartner, Inc.が2010年2月23日に発表した調査結果によると,2009年のスマートフォン販売台数に占めるAndroid搭載機のシェアは3.9%(Tech-On!の関連記事3)。MWC2010の盛り上がりを考えると,2010年はAndroid搭載機の大幅なシェア拡大も考えられます。ただし,MWC2010にはフィンランドNokia Corp.はブースを出展していないため,同社が主導する「Symbian」の搭載端末が目立たないのは仕方がないかもしれません。会場にはこのほか,米Microsoft Corp.の「Windows Mobile」や米Qualcomm,Inc.の「Brew Mobile Platform」を採用した端末や,独自のソフトウエア基盤「bada」を採用したSamsung社の端末も登場しており,ソフトウエア基盤を巡る競争は激しさを増しそうです。
私自身,注目するのがMicrosoft社が発表したソフトウエア基盤「Windows Phone 7 Series」です(Tech-On!の関連記事4)。「People」「Pictures」「Office」「Games」「Music+Video」「Application」の六つの分類で複数のアプリを統合するなど,従来のWindows Mobileシリーズとは一線を画した操作画面を特徴とします。例えばPeopleの場合,「Facebook」や「Windows Live」などといった,あるユーザーとのコミュニケーション履歴を時間やユーザー単位で統合して表示することができます。これは先に述べた,TimescapeやSocial Hubとほぼ同等の機能といえます。Windows Phone 7では,端末メーカー自身がUIに改良を加えることができませんが,逆に言えば,「端末の開発効率を高めることができる」(Microsoft社)といいます。
さらに,Windows Phone 7採用端末に搭載するチップセットを含めた電子部品仕様は,Microsoft社がある程度規定する予定です。これにより,「ある部品を大量調達する際のコストも抑えられる」(同社)といいます。端末の開発効率の向上と部品調達コストの低減により,「同程度の仕様であるAndroid搭載機に比べて販売価格は安くなる」(同社)を見込んでいます。
発表会では,Windows Phone 7を採用する予定のパートナー企業も紹介されました。Samsung社やLG社,HTC社,Sony Ericsson社,東芝といった端末メーカーに加えて,米Garmin International Ltd.と台湾ASUSTeK Computer, Inc.(共同ブランド「Garmin-ASUS」を展開),米Hewlett-Packard Co.(HP社),米Dell Inc.など主にパソコンやPNDを手掛けていた新興メーカーが名を連ねています。発表スライド(関連記事4の一番下の写真)における「パートナー企業の並び順は,決して意図的ではない」(Microsoft社)としていますが,これらの新興メーカーが,Sony Ericsson社や東芝より前に並んでいたのが気になります。Garmin-ASUSやDell社,HP社がWindows Phone 7の採用を機に,さらなる市場シェア拡大を目論んでいるのかもしれません。
いずれにせよ,Windows Phone 7搭載のスマートフォンが登場するのは,「2010年のホリデー・シーズン(年末)」(Microsoft社)の予定です。それまでに市場投入予定のAndroid搭載端末がシェアを拡大するのか,Nokia社のSymbian搭載機,米Apple Inc.の「iPhone」シリーズなどが自力を発揮するのか,注目しています。


















