テレビが「ダダ漏れ」になる日
いやはや,あんなに目が回る会見は初めてでした。
2月2日にソフトバンクが開いた決算説明会です。
同社はこの日,説明会に先駆けてインターネットを使った動画配信サービスの米Ustream,Inc.への出資を発表。説明会の模様をUstream社の配信システムを使って生中継しました(関連記事はこちらとこちら)。
Ustream社の動画配信は,個人がパソコンのWebカメラやカメラ付きスマートフォンなどで撮影した動画を無料で手軽に生放送できることが特徴。ミニブログ「Twitter」などとの連携機能を提供していて,視聴者同士が動画を見ながらリアルタイムに感想などをやり取りできることで人気を集めています。最近,インターネットで流行しつつつある,イベントや記者会見などの生中継,いわゆる「ダダ漏れ」の中核ツールです。
目が回った理由は,動画の隣で,視聴者の投稿をリアルタイムに一覧表示するTwitterのタイムライン。説明会の動画を見ている人が,短い感想を次々と投稿していくので,ものすごいスピードで“つぶやき”が流れていきます。少し長めの投稿は読み終わる前に画面から消えていく。ソフトバンクの孫正義社長の話を聞きながらタイムラインを追うのは,なかなか骨が折れる作業。説明会場で自分のパソコンの画面をにらみながら,あまりの目まぐるしさにめまいすら覚えました。
「まだコメントする立場にない」
直前に米Apple社がタブレット端末「iPad」を発表したことも,投稿が盛り上がった大きな理由の一つでしょう。生中継の視聴者には,iPhoneを販売するソフトバンクから何か発表があるのではと見守った人も多かったようです。
長時間の社長プレゼン後,説明会が質疑応答に入っても,記者やアナリストからなかなか「iPad」に関する質問が出ない。業を煮やした視聴者から「そんな質問はいいから,iPadのことを聞いて」という趣旨のつっこみ投稿が相次ぐ一幕も。結局,質問が出て,「まだコメントする立場にない」と孫社長が答えましたが,なかなかスリリングなエンターテインメントの様相でした。
それにしても,孫社長のプレゼンは,インターネット・ユーザーには好評のようでした。「これだけ夢を語れる経営者は日本にいない」「(Apple社の)Steve Jobs氏並みだ」といった趣旨の賞賛が画面上を多く流れていきます。
ソフトバンクの決算は好調。発表した2009年4〜12月期の連結営業利益は,前年同期比33%増の3663億円と最高益を更新しました(関連記事はこちら)。いつも自信満々の孫社長の表情は,さらに自信に満ち溢れています。スマートフォン「iPhone」の話題になったときには,「iPhoneが日本に馴染まないと言っていた人は間違いだと認めてほしい。この1年の販売台数で断トツの1位だった」と絶好調です。
iPhoneを超える勢いで孫社長が前面に出したのは,中国のインターネット企業への傾倒ぶり。ソフトバンクは,電子商取引サービスを手がける中国のAlibabaグループを筆頭に,中国の若者に人気のSNS「人人(レンレン)」を運営するOak Pacific Interactive(OPI)社などに次々と出資しています。
「これからのインターネット分野を牽引するのは米国ではなく,世界最大の利用者を抱える中国。それを押えているのがソフトバンクだ」というのが,孫社長の最近の主張です。不景気な話が多い中,こうした夢を語る姿に生中継の視聴者は賞賛を贈ったのでしょう。
ただ,最近の米Google社との騒動などを見ていると,巨大な市場を抱える中国の特異性が際立ちます(関連記事はこちら)。



















