お薦めトピック
- AD -
日経エレクトロニクス雑誌ブログ

「iPad vs Kindle」議論に違和感

Facebookでシェアする
Twitterでつぶやく
2010/02/09 09:01
内田 泰=日経エレクトロニクス

 米Apple Inc.がタブレット型端末「iPad」を発表して以降,そこかしこでiPad登場のインパクトを議論する声が聞こえてきます。「iPadは新しいコンピューティングの時代を拓くデバイスだ」「パソコンのヘビー・ユーザー以外は,これ一台で済む」という絶賛派から,「何がすごいのか分からない」「世界初のPDAと言われたApple Newtonの二の舞になる」との懐疑派までさまざまです。

 個人的な意見としては,「少々肩透かしをくらった」というのが正直なところです。筆者は2010年1月初頭に開催された「2010 International CES」で,数多くのタブレット型端末の試作品を目にしました。その時感じたのが,「タブレット型端末はハードウエア面で決定的な差異化をするのは難しい」ということです。プロセサやディスプレイの選択肢はさまざまですが,ユーザーから見れば,どれも“板型の端末”だからです。

 タブレット型端末の勝負所は,ユーザー・インタフェースやアプリケーションなどソフトウエアの作り込みにあります。その分野に長けたApple社なら,「皆を驚かせるような提案をしてくる」と予想していたのです。ところが,iPad発表会でのSteve Jobs氏のプレゼンテーションからは,iPhoneの時のような驚きを感じませんでした。確かに搭載されるアプリケーションは同社らしく洗練されているのですが,使い方の提案はほぼ「想定内」だったのです。

 ここから感じたのが,タブレット型端末という,如何様にも設計できるデバイスの難しさです。と同時に,「これってどう?あなた方ひとり一人が最適な使い道を探してよ」と,まずは世に問うのが,Job氏の狙いだったような気もします。

雑誌コンテンツはiPadで花咲く?

 さて,iPadについてはキラーアプリケーションの一つである電子書籍分野で,米Amazon.com社の電子書籍端末「Kindle」とどのような戦いになるのか,について関心が高まっています。もちろん,iPadにとって電子書籍というのは,アプリケーションの一つに過ぎませんが,現在,急成長する電子書籍市場をリードするAmazon社への影響は気になるところです。

 しかし,筆者はiPadとKindleは“別物”ではないかと考えています。Kindleへの影響はゼロではないでしょうが,購入層や利用目的が異なると思います。現在,Kindleの主力ユーザーは,40歳以上の読書愛好家です。彼らにとって,ベストセラーの書籍などがお店に行かなくても割安価格で,しかも思い立ったらすぐに購入できるKindleはすごく魅力的な端末です。現在は白黒表示しかできませんが,長時間の読書には明らかにカラー液晶よりも目に対する負担が少ないのは事実です。

 米出版大手Hearst社の子会社で電子書籍事業を展開するSkiff社のPresidentであるGilbert Fuchsberg氏は,「米国には,日常的に新聞や雑誌を読み,毎年6冊以上の本を読む人口が6500万人以上いる。電子書籍端末のターゲットはこうした人たちで,それは世界各国に数多くいる」と言います。Apple社の電子書籍配信サービス「iBookstore」が,Amazon社の「Kindle Store」にコンテンツの質と量で追いつくのには時間がかかると予想されるため,本好きの人たちはKindleを選ぶことになるでしょう。

 一方,LEDバックライト付きのカラー液晶を搭載するiPadは,長時間の読書というより,雑誌や新聞をパラパラめくって読みつつ,インターネットで関連情報をチェックするような情報端末としての使い方に適していると思います。読書に没頭できるように設計されたkindleとはユーザー層が異なるはずです。
 
 電子書籍端末としてのiPadに期待したいのは,電子ペーパーを搭載するKindleでは技術的に非常に難しい,カラーの雑誌コンテンツを快適,しかも楽しい体験として提供することです。9.7型の大型画面に,雑誌のレイアウトを保持したまま表示しつつ,雑誌の写真部分をクリックすると動画が再生されるなど,新たな体験を提供できる可能性があるのがiPadです。

 Apple社が参入したことで,これから発展期を迎える電子書籍市場では,さまざまな試行錯誤が見られるようになるでしょう。出版社である我々自身がどういう対応をしていくのかを含めて,電子書籍市場は熱い時代が続くと期待しています。

 日経エレクトロニクスは2010年2月22日に「電子書籍サミット2010――明日の市場,技術を見極める――」というセミナーを開催します。Amazon.com社とともに電子書籍市場を引っ張る米Sony Electronics社をはじめとして,Google社,Samsung Electronics社,LG Electronics社などの業界のキーマンが一堂に会します。さらに,電子書籍に造詣が深い元マイクロソフト会長で現・慶応大学教授の古川享氏や,Apple社の動向に詳しいジャーナリストの林信行氏などにもご登壇頂きます。皆様のご参加,お待ちしております。

とても参考になった 7
まあ参考になった 13
ならなかった 17
 投票総数:37
コメントに関する諸注意
(必ずお読みください)



コメントの掲載は編集部がマニュアルで行っておりますので、即時には反映されません。しばらくお待ちください。
記事中に誤りなど,編集部へのご連絡にはフッターのご意見/ご感想・お問い合わせをお使いください。
English
中文

最新号

最新号の目次
5月14日号から
特集

鉄道で突き抜けろ

次世代技術の「実証の場」として鉄道分野が注目を集めている。鉄道事業者が省エネ対策や新サービスの展開に力を注いでいるためだ。多くの設備を自前で持つ鉄道事業者は、次代のエネルギー・システムを担う力を秘めている。 (続きを読む

定期購読のお申し込み 最新号を一冊買う

購読者限定記事ダウンロード

日経エレクトロニクスPremium定期購読者の方はこちら
日経エレクトロニクス定期購読者の方はこちら