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「プリウス」の件,雑感

2010/02/05 17:44
高野 敦=日経ものづくり
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トヨタ自動車の「プリウス」の問題が話題になっている。この件について,同社は情報をあまり公開しておらず,情報収集を継続するにしても現時点ではっきり言えることは少ない。しかし,この件が示唆することは多い。多すぎてあまり整理できていないが,この件が示唆している「製造業全体の課題」を取りあえず三つ挙げてみたい。

求められているのは情報公開

 初めに,顧客対応をリコールや改善措置とするか,サービスキャンペーンで済ませるかという問題だが,同社は「(道路運送車両法の)保安基準には抵触していない」(同社常務執行役員で品質保証担当の横山裕行氏)という見解なので,後者を採用するかもしれない。実際,サービスキャンペーンにするのではないかという観測の報道が既に出てきている。

■追記
2010年2月5日21時から同社社長の豊田章男氏が記者会見を行うので,このことで追加の発表があるかもしれない。[2010/2/5 18:50]
■追記2
上記の会見では,プリウスの顧客対応に関する新情報はなく,引き続き「検討中」とのこと。[2010/2/5 22:50]
■追記3
上記の会見の概要を記事にしました。[2010/2/6 03:35]

 しかし,これは消費者向けの製品で昨今顕著な傾向だが,消費者が不安になるような現象が確認されたら,それが設計・製造上の問題かどうかは抜きにして,とにかく社告を出して製品を回収・修理するというケースが増えている(特に,経年劣化による事故)。こうした傾向の背景には,2007年に改正消費生活用製品安全法が施行され,重大事故の報告・公表制度が整備されたことがあると考えられる。さらに,消費者庁が創設されて,行政が消費者問題に積極的にかかわってくるようになってきたことも大きい。

 だからリコールや改善措置にすべき,ということを言いたいわけではない。気になっているのは,リコールや改善措置といった制度自体が社会の価値観の変化について行けていないことだ。

 例えば,リコールや改善措置は原因究明および対策決定後に消費者に発表されるが,情報がすぐに伝わる現代,それではあまりにも遅い。とはいえ,原因が究明できていない状況では消費者の不安をあおるだけなので,段階的に(例えば「苦情」レベル,「疑念」レベル,「重大な疑念」レベルなどのように),または定期的に情報を公開するようにして,それを制度化するとよさそうだ。もちろん,必要な情報をきちんと公開するという意識が企業側に求められるわけだが。

「すき間」をどう埋める

 次に,機能の増加/高度化/複雑化に伴い,ますます増える「境界」を誰がチェックするのかという課題である。今回の問題は,回生ブレーキで減速している際に何らかの要因(凍結した路面上を走行して車輪間に回転差が発生するなど)でアンチロック・ブレーキ・システム(ABS)の制御プログラムが起動すると,回生ブレーキから油圧ブレーキに切り替えることになるが,その油圧ブレーキが利き始めるまでの時間が従来モデルより長いということだった。これは「通常走行時におけるブレーキの制御」と「ABSプログラム動作時のブレーキの制御」との境界で生じた問題ともいえる。

 かつて六本木ヒルズ回転ドア事故の原因究明に当たった工学院大学教授の畑村洋太郎氏は「役割分担のすき間で事故は起こる」と指摘した。すき間をカバーし合うのが理想の姿だが,現実は「誰もやらない領域」が存在する。機能の増加/高度化/複雑化で,こうした「すき間」はあちこちに生じているだろう。だが,分業化が進むにつれ,すき間を埋められるだけの広範な知識を持つ人材を育てるのは,逆に難しくなっていることが考えられる。また,「すき間」を埋める人材というのは,重要だけど評価されにくいという側面がありそうだ。人材育成や評価という面も含めて品質を考える必要がある。

メカ/エレキ/ソフト連携の在り方とは

 最後に,増え続けるソフトの信頼性をどう高めるかという課題だ。ここで重要になるのは,ソフト単体の品質というよりは,メカやエレキとの整合性だろう。

 たまたまある取材先の技術者と組み込みソフトについて話す機会があったのだが,やはり組み込みソフトの品質には苦労しているという。

 ソフト開発の難しさとして挙がる点は,その流用しやすさゆえに,内部のロジックやパラメータが一人歩きし,そのうちにメカやエレキとの整合性が失われることだ。加えて,ソフトの本格的な開発は,メカやエレキの仕様がある程度固まってからでなければ着手できないので,開発期間が短いことも大きく影響しているという。

 こうした問題の解決法として,前出の技術者はメカ/エレキ/ソフト連携が有効とみている。メカ/エレキ/ソフト連携は,どちらかといえば電気回路やソフトのデータでメカ(3次元データ)の品質を高める(メカがちゃんと動くか確かめるなど)という面で語られることが多かった。だが今後は,3次元データなどを利用してソフトの生成や検証を行うことによってソフトの品質を高めることも重要になる。つまり,メカ設計者がソフトの品質向上に協力する(もちろんその逆もある)という姿勢が非常に大事になってくるのではないだろうか。

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