お薦めトピック
- AD -
日経エレクトロニクス雑誌ブログ

Google社が「中国撤退を示唆」したワケ

Facebookでシェアする
Twitterでつぶやく
2010/01/21 10:36
Phil Keys=シリコンバレー支局

 米Google Inc.が中国事業の見直しを示唆したというニュース(ブログ記事Tech-On!関連記事)は今なお,産業界などに波紋を広げ続けている。最終的にどのような結末になるのか,まだ見えない状況だ。Google社がこうした行動に出た背景として,同社が中国市場で大きな成功を収めていなかったからというシニカルな意見がある。これに対して私は,同社の米国における存在感や社内のアイデンティティーを守ることが,今回の行動に至った一つの重要な点ではないかと考えている。

 1998年に設立されたGoogle社は,当時,米Stanford Universityの大学院生だったLarry Page氏とSergey Brin氏の発想から生まれた。彼らは設立に際して,理想主義的な考えをいくつも盛り込んだ。その考えの基本は,有名なモットーである「don't be evil(悪いことをしない)」(社内の行動準則)に要約できる。この考え方はGoogle社に対する世間のイメージ向上につながった。また,シリコンバレーで働く技術者たちの多くは,技術を通して世の中を正しい方向へ持っていくことは可能だと信じている。このため,Google社の“良い”イメージは,同社が優秀な人材を獲得するためにも役立っているようにみえる。

 しかし,設立から時間が経過してGoogle社の事業規模が大きくなると共に,モットーである“don't be evil”が波紋を呼ぶケースも出てきた。特に,同社が2005年に中国で事業を開始する際には,難題が待ち構えていた。1949年に中国が共産主義国家になって以来,米国と中国はあらゆる局面で常に友好な関係を保っているとはいえない。例えば現在の中国は,経済面では資本主義的になっているが,人権問題などについては米国との間で政治的な摩擦が続いている。

 Google社は中国に法人を設立する際に,中国内で事業を展開できる代わりに,Google社が提供するWebサービスを中国政府が検閲することについて合意した。この事実は大きな反響を呼び,「なぜこうした事態になったのか」を説明するためにGoogle社は米国下院の委員会にも呼ばれたりもした(当時のGoogle社の証言)。

 だが,たぶん今回の中国事業撤退の示唆に至る過程で,Google社幹部の頭の中に浮かんだことは,同社のライバルである米Yahoo! Inc.が巻き込まれた出来事だったに違いない。Yahoo!社は2005年,中国人活動家が逮捕された事件で,逮捕につながった情報を中国政府に提供したとして訴えられた。2007年11月には,Yahoo!社の当時のCEO兼Co-founderであるJerry Yang氏が,事態を説明するために米国下院の委員会に呼ばれた(当事のYahoo!社の証言)。Yang氏はホロコースト生存者であった下院議員Tom Lantos氏から厳しい追及を受けた。Google社の幹部は中国政府との現行の関係がこのまま続けば,いずれYang氏と同じ運命になるのではという懸念が脳裏をかすめたはずである。

 中国問題以外では,Google社の事業拡大に併せて,他の問題も浮上している。例えば,同社が書籍をデジタル化(スキャン)して検索できるようにするという行為は,米国以外のフランスやドイツでも批判を浴び,今も訴訟が続いている。Google社の幹部を最も悩ませているのは,同社のインターネット市場における立場を考えると,いずれ独禁法違反で訴えられる可能性があるのでは,ということだろう。実際,New York Timesによると,米国連邦政府はGoogle社のCEOであるEric Schmidt氏が米Apple Inc.の取締役会のメンバーであることが,米国の独禁法に抵触するかどうかの調査を2009年5月に始めたと報告した。その後,Schmidt氏がApple社の取締役会メンバーから外れることになるのだが,連邦政府の調査開始がその引き金になったと見られている。

 Google社は現在,単なる検索エンジン提供企業ではなく,エネルギー分野を含めて多くの市場に参入しようと動いている。さまざまな国の政府との付き合いが,これまで以上に深くなるだろう。今回の中国での件によって,Google社は自社がうたう哲学にあくまでも従うという決意を内外に示したことで,そのイメージは少なくとも欧米では改善された。もし今後,Google社に関連する別の論争が起きた場合,欧米の政治家が今回のGoogle社の行動を覚えていたら,Google社に賛同する立場を取る可能性があるだろう。

とても参考になった 41
まあ参考になった 8
ならなかった 4
 投票総数:53
コメントに関する諸注意
(必ずお読みください)



コメントの掲載は編集部がマニュアルで行っておりますので、即時には反映されません。しばらくお待ちください。
記事中に誤りなど,編集部へのご連絡にはフッターのご意見/ご感想・お問い合わせをお使いください。
English
中文

最新号

最新号の目次
5月14日号から
特集

鉄道で突き抜けろ

次世代技術の「実証の場」として鉄道分野が注目を集めている。鉄道事業者が省エネ対策や新サービスの展開に力を注いでいるためだ。多くの設備を自前で持つ鉄道事業者は、次代のエネルギー・システムを担う力を秘めている。 (続きを読む

定期購読のお申し込み 最新号を一冊買う

購読者限定記事ダウンロード

日経エレクトロニクスPremium定期購読者の方はこちら
日経エレクトロニクス定期購読者の方はこちら