東芝の携帯機器向け燃料電池に,システム開発の苦労を見た
東芝が2009年10月末に携帯機器向け燃料電池「Dynario」を3000台限定で発売しました(図1)。同社の社長が「2008年度末までに発売する」というアナウンスがあったものの,その後,なかなか発表がありませんでしたが,ついに悲願の実用化を果たしたことになります。

日経エレクトロニクスでは,2009年11月30日号の解説「東芝の燃料電池を開けてみた」で分解記事を掲載しましたが,初めて中を見て驚いたのは,その部品点数の多さでした。超小型ポンプやバルブ,マイコンや制御用IC,制御基板など燃料電池セル以外の回路部品が多数搭載されており,加えて,金属製の外装や強固な補強材で構成するなど,過剰なほどガッチリとした筐体にも驚かされました。
Dynarioには,発電ユニットを2個,表と裏にして配置しています。筐体にはこのほか,円筒型Liイオン2次電池や,電源スイッチと入出力端子を備える制御基板を2枚搭載しています。発電ユニットは,発電セルを格子状のステンレス鋼板と燃料供給プレートとなる樹脂筐体との間に挟み,リベットとかしめでがっちりと締結されています。そのため,破壊しないと発電セルを取り出すことはできません。
発電ユニットには,燃料バルブと燃料ポンプが搭載されており,それを制御するための制御ICがそれぞれ搭載されています。発電ユニットからの電力を制御したり,起動時にLiイオン2次電池の電力を使って発電ユニットを駆動したりするための制御は,本体の電源や入出力端子を実装している制御基板で行っています。

一方,発電セルはというと至ってシンプルであり,この発電セルから一般消費者が購入できる燃料電池システムとして発売するまでの機器開発の苦労がうかがえます(図3)。今回の機種は3000台を製造した後は増産せず,第2弾は新機種を発売する予定のため,「今回は実験用基板を流用したのではないか」(他社の燃料電池技術者)との見方もありますが,それでもやはり発売するためには,並々ならぬ開発の苦労があったはずです。

そうしたことを思うと,2万9800円という価格は破格に安いと感じてしまいます。ただ,今後はそれぞれの発電ユニットにある燃料ポンプや燃料バルブを1個ずつにしたり,制御ICなどを統合すれば,より小型・軽量化な製品となりうる可能性を秘めているのは確かなようです。とにもかくにも,「有言実行」で販売に踏み切った東芝には頭が下がる思いでいっぱいです。
















