日経エレクトロニクス雑誌ブログ

「なぜ,誰もE Inkを攻めてこないのか」

記事にコメントする
コメントを読む
ソーシャルブックマークに追加する
この記事にタグを付ける
記事のタイトルとURLを入れたメールを作って,知人に紹介する
後からこの記事を見られるように保存する
2009/09/25 09:57
小谷 卓也=日経エレクトロニクス

 タイトルにあるのは,電子ペーパー最大手の米E Ink Corp.で,数カ月前まで副社長を務めていた桑田良輔氏(現・PROJECT FAR EAST 代表)の言葉です。同氏は先日,「私がE Ink社在籍時に,気持ち悪かったことがある。何で,最先端の液晶技術や最先端の電池技術を組み合わせてE Ink社を攻めてこないのか。自虐的だが,E Ink時代には,誰かが挑戦してくれないか,白黒付けてくれないかと待っていた」と語りました。

 話の背景はこうです。現在,米Amazon.com,Incの「Kindle」やソニーの「Reader」をはじめとして,世界で数十種類の電子書籍端末が存在します。このほとんどに,E Ink社の電子ペーパーが搭載されています。ただし,同社の現在の電子ペーパーは白黒表示である点や,反応速度が遅い点など,課題が多いのも事実です。ですから,カラー表示や反応速度に問題がない液晶を利用して,かつ電子ペーパーの利点である低消費電力や視認性などにも工夫を凝らしたアプローチによって,E Ink社の牙城を崩そうとする勢力が出てきても何ら不思議ではない,というのが桑田氏のコメントのおおまかな趣旨です。

 もっとも,電子書籍市場が拡大し始めたのは最近のことですから,これまで対抗勢力が出てこなかったのは決して不思議ではありません。しかし,今後の市場の急拡大が見込まれている今,桑田氏がかねて待ち望んでいた状況が,少しずつ生まれそうな気配が出てきています。

 筆者は桑田氏の冒頭の発言を聞いた後,シャープ 執行役員 研究開発本部副本部長 兼 システム技術統轄の千葉徹氏にインタビューする機会がありました。そこで,桑田氏の発言を紹介したところ,千葉氏は次のように語りました。「まさに,我々はこれからそこを狙っていきたい。これまで液晶は,携帯電話機やテレビといった用途で十分すぎるほどの需要があった。しかし今,次の新たな用途を探していかなければならない状況であり,その一つとして電子書籍には大いに注目している」。

 シャープだけではありません。台湾Pixel Qi Corp.が開発した,読書用途に特化したモードを備える液晶パネル「3Qi」も,E Inkの対抗馬の一つといえそうです。同社は2009年内に,ネットブックや電子書籍端末に向けて3Qiを実用化する予定です。

 もちろん,電子ペーパーでE Inkに対抗する勢力も続々と登場するでしょう。例えば,液晶大手の台湾AU Optronics Corp.(AUO社)は電子ペーパーを手掛ける米SiPix Imaging社を買収し,2009年内に電子書籍市場に向けた製品供給を本格的に始める計画です。

 このように,2009年末から2010年にかけて,あちらこちらで「E Inkを攻める」アプローチがお目見えしそうです。その行方を,引き続き興味深く見ていきたいと思います。


<お知らせ>2009年10月30日に「FPD International 2009」の併設フォーラムとして,電子書籍に関するセミナー「ついに来た電子書籍の時代,巨大市場攻略のカギを探る」を開催いたします。例えば,Pixel Qi社はウワサの液晶パネル「3Qi」について講演し,3Qiの実機サンプルを国内初披露する予定です。また,AUO社は電子書籍市場に向けた戦略を講演します。プログラムの詳細はこちら

とても参考になった 5
まあ参考になった 11
ならなかった 13
 投票総数:29
記事中に誤りなど,編集部へのご連絡にはこちらの入力画面をお使いください。編集部へのご連絡

最新号

2009年11月16日号
11月16日号から
特集

技術者サバイバル

「会社に残ってもやることはないし,今辞めないと割増金は出ないよ」。今年50歳になるAさんは,会社からこう切り出された。・・・ (続きを読む

定期購読のお申し込み 最新号を一冊買う

購読者限定記事ダウンロード

日経エレクトロニクスPremium定期購読者の方はこちら
日経エレクトロニクス定期購読者の方はこちら