お薦めトピック
- AD -
日経エレクトロニクス雑誌ブログ

米国で活発化する「スマート・グリッド」

はてなブックマーク
Facebookでシェアする
Twitterでつぶやく
2009/03/27 09:17
蓬田 宏樹=日経エレクトロニクス

 米国において,電力供給網を高度化するための取り組みが活発化しています。送電網など大規模なものから,家庭のエアコンや照明の制御など小規模のものまで,各種のシステムや機器を最適制御してエネルギー利用の効率化を目指すコンセプトで,「スマート・グリッド」と呼ばれています。

米景気刺激策の重要項目に

 エネルギー利用の効率化や送電網の高度化を目指す取り組みは,以前からありました。温室効果ガスの削減が求められる中で,電力の有効利用を目指すための制御技術や,再生可能エネルギーを積極的に活用するための送電網技術の高度化として,電力事業者などが取り組んできました。このほかホーム・オートメーション機器メーカーが主体となるものなど,さまざまなスマート・グリッド関連団体があり,手法も乱立している状況です。それが,ここへきて一気に集約,もしくは相互連携するための動きが加速しています。発端は,スマート・グリッドが米Obama政権の景気刺激策の重要項目として盛り込まれたことです。数十億〜数百億米ドル規模の予算が計上されており,その受け皿作りの議論が本格化し始めたわけです。

 中でも先週末に,米エネルギー省傘下の連邦エネルギー規制委員会(FERC:federal energy regulatory commission)が発表した「Smart Grid Policy」に,業界の注目が集まっています。各種のスマート・グリッド関連システムや機器において,相互接続可能な標準策定の重要性をはっきりと打ち出しました(関連する発表資料)。これまで,米研究機関である「NIST(National Institute of Standards and Technology)」や米電力事業者が中心となる「EPRI(Electric Power Research Institute)」などがそれぞれ推進していたスマート・グリッド関連の取り組みを,各種の調整作業を進めながら連携させることを目指すもようです。米電力事業者の関係者によれば,「Obama政権が進めているスマート・グリッドの取り組みを具現化するための組織作りが,いよいよ始まることになる」としています。

IEEEでの標準化も

 スマート・グリッドでは送電網技術の高度化に加え,各種の通信技術,セキュリティ技術などが求められます。既にこうした要請に対応するべく,標準化団体も動き出しました。例えば米IEEEは2009年3月19日に,スマート・グリッド関連システムの互換性確保を目指す部会「P2030」の設立を承認しました(関連するPDF形式の資料)。インターネット関連の標準化団体であるIETF(Internet Engineering Task Force)も,設備系機器の電力管理に向けたセンサ・ネットワークの要素技術を策定するため,「roll(routing over low power and lossy networks)」という部会においてメッシュ・ルーティング技術の標準策定を早める方針を打ち出しました。IEEEではこのほか,近距離無線などを手がけるIEEE802.15.4委員会に,スマート・グリッド関連機器で利用する無線通信方式の標準化を行う部会「TG4g(Task Group 4g)」が設置されました(TG4gのページ)。

 スマート・グリッドに関しては,米電力事業者や米General Electric Co.などのほか,IT系の大手メーカーも関心を寄せています。米IBM Corp.はスマート・グリッドに関するテレビCMを開始したほか,Cisco Systems Inc.も標準方式策定に積極的です。なかでも動きが活発なのは米Google Inc.。米議会において,スマート・グリッドにオープンな標準規格採用の重要性を主張したほか(Tech-On!の関連記事),スマート・メーター向けのソフトウエア・ツールの開発やスマート・メーター関連団体への加盟など,積極的に動いています(Tech-On!の関連記事)。このほか,関連するベンチャー企業も立ち上がってきています。

 Obama政権の景気刺激策にスマート・グリッドが盛り込まれたのも,米国をその先進地域にすることで,関連産業を大きく育成するという狙いがあります。ここでノウハウや知的財産権を蓄積した企業が成長すれば,米国の雇用促進につながるだけでなく,将来は海外市場において優位性を発揮することも視野に入れているのでしょう。米業界関係者からは,「スマート・グリッドは,次代のインターネット産業のようなもの。海外で米企業の優位性が発揮されることにつながる」との指摘も出ています。

 米国におけるスマート・グリッドの盛り上がりは,いずれ様々な形で国内エレクトロニクス・メーカーにも影響してくることになりそうです。大規模送電網だけでなく,再生可能エネルギーのシステムや,スマート・メーター,無線通信用ICなどいろいろな市場を生みだす可能性があるほか,いずれは日本国内市場に何らかの影響がある可能性もあります。日経エレクトロニクスでは現在,米国のスマート・グリッドに関する取材活動を進めています。掲載の折には,是非ご一読いただけたらと思っております。

とても参考になった 16
まあ参考になった 3
ならなかった 0
 投票総数:19
コメントに関する諸注意
(必ずお読みください)



コメントの掲載は編集部がマニュアルで行っておりますので、即時には反映されません。しばらくお待ちください。
記事中に誤りなど,編集部へのご連絡にはフッターのご意見/ご感想・お問い合わせをお使いください。
English
中文

最新号

最新号の目次
2月6日号から
特集

がんと闘う

医療の世界に、パラダイム・シフトが起ころうとしている。がんを超早期の段階で発見し、克服しようとする動きだ。エレクトロニクス技術にその牽引役としての期待が集まっている。 (続きを読む

定期購読のお申し込み 最新号を一冊買う

購読者限定記事ダウンロード

日経エレクトロニクスPremium定期購読者の方はこちら
日経エレクトロニクス定期購読者の方はこちら