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エネルギー革命?驚異の電気2重層キャパシタは本物か?

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2009/03/04 09:18
吉田 勝=日経エレクトロニクス

 ある企業が,容量を飛躍的に増大させた電気2重層キャパシタ(EDLC)を開発したとのふれこみで販売代理店を募っている。一般にEDLCのエネルギー密度は数Wh/kg程度だが,そのキャパシタ技術(ここでは「G」としておく)を使ったそれは,何と200Wh/kgとLiイオン2次電池以上の性能を誇り,出力密度も従来のEDLCやLiイオン2次電池をはるかに上回るという。EDLCなのでもちろん急速充電が可能。2009年春に発売するとして,2008年夏頃から代理店募集のセミナーを全国で展開しているようだ。

 ところが,それほどすごい技術なのに,電池業界ではまったく話題になっていない。何人かの技術者に聞いてみたが誰も"G"を知らないという。技術発表もない。過去のセミナー参加者によると,大手メーカーなどに技術情報が漏れたり,電池メーカーなどから妨害されたりしないように口コミで代理店を募っているというのだが…。はたしてその性能の真偽は?同社が開催している事業説明会に"こっそり"参加してみた。

電気自動車1000km走行?

 2009年1月,都内某所で開催された説明会に向かう。名前と住所を書いただけであっさり入場できた。以前の参加者から報道機関はお断りと聞いていたので,職業を聞かれたらどうしようかと気を揉んでいたのだが杞憂だった。会場には,100人前後集まっていただろうか。見渡すと参加者の大半は中高年の男女。あくまで販売代理店募集の説明のためか,ほとんどが技術畑とは無縁に見えた。主催者の挨拶の内容から判断すると,代理店契約済みや検討中のリピータも多いようだ。前半の技術説明会にしか参加しなかったため詳細は不明だが(後半は販売権取得に関する説明会),高額の契約金を払って統括販売代理店の権利を取得し,そこがさらに2次代理店を募ってコミッションを受け取るという,一種のネットワーク・ビジネスのような形態を採っているらしい。

 説明会での話によると,"G"は,開発者のK氏が開発したとされる0.5〜20nmの空隙を持つ多孔質の炭素材料を電極に用いることで驚異的な大容量を実現しているという。電極の比表面積の増大で静電容量を飛躍的に高めたということらしい。まあ,理屈は合ってる。別途入手した資料によるとエネルギー密度は,最大200Wh/Kgをうたっている(従来のEDLCより2ケタ大きい!)。加えて,"G"に放電を制御する独自の回路を組み込むことで,通常短時間で放電するキャパシタから少しずつ電気を取り出せる技術を実現したという。説明会では,すごいキャパシタであり,世界のエネルギー事情を一変させる可能性がある---ということをしきりと力説していた。

 目玉となる商品は,"G"のセルを複数組み込んだ「W」なる蓄電装置である。ラミネート封止タイプの名刺大の"G"を,数十cm四方の筐体に複数個搭載したもの(という説明)で,静電容量は100万F。新聞紙程度の大きさ(100×50cm)の独自の太陽電池パネルを付属して80万円で2009年春に発売するとのことだった。なにしろエネルギー密度が200Wh/kgだから,説明通りなら高速充電が可能でLiイオン2次電池以上の容量を持つ小型電池が登場することになる。説明では,その太陽電池パネルを接続して蓄電すれば,一般家庭での消費電力を十分まかなえるということだった。

 このほか,セミナーでは,サンプル品を使ってLED照明を点灯するというデモンストレーションが行われた。また,既に電動アシスト自転車に搭載したり,名刺大の"G"で電気自動車を数100km走らせたりした実績がある,現在開発中のセルを使えば,10分程度の充電で電気自動車を1000km走らせられるといった話も紹介された(!)。本当なら自動車メーカー垂涎の電池だ。

5分で家庭用電力を蓄電

 ただし,そのデモンストレーションでは,"G"が機能しているとは確信できなかった。短時間の点灯のため,既存の電池を使っている可能性も払拭できなかったからだ。また,セミナー会場では試作品も回覧されたのだが,筐体だけなのでなんともいえない。定量的なデータもほとんど示されない。これでは諸手を挙げて信用しろいうのは無理な話である。

 そもそも,そんな大容量のEDLCが実現できるのかということはあるのだが,他にも疑問点が多々ある。例えば,"W"に付属する小さな太陽電池パネルで家庭の電力をまかなえるとすると,まずその太陽電池パネルの発明が賞賛されるべきではないかということ。現状の技術では,屋根に大きな太陽電池パネルを敷き詰めても,家庭の消費電力の半分程度をまかなうのがやっとされているのに…。ところが,太陽電池パネルに関してはたいした説明はない。しかも,"W"は5分ほどで満充電できるという説明があるため,あたかも太陽電池パネルによる5分程度の充電で,家庭用の消費電力量が蓄電できるかのような印象を受ける(受けるが,明言はなかった)。

面積0.5m2の太陽電池パネルでは,発電効率が50%(!)としても出力は250W,たとえ100%でも500W程度に過ぎない。これだけじゃ,一般家庭の1日の電力量(10〜15kWhほど)はぜんぜんまかなえない。仮に500Wで出力し続けても,1日の日照時間だけでは必要な電力量に達しないのだが,こうした点については言及がなかった。

 「環境にやさしい画期的なキャパシタです」といった説明を聞きながら,疑問は募るばかりだった。このほか,"W"は無線通信機能で稼働状況を本社で一括監視しており,故障すればすぐに修理・交換に駆けつけるというのだが,その無線通信網がなんなのかさっぱり分からない。全国を網羅するような独自の通信網を持っているのか?はたまたハム無線みたいなものなのか?それだけでもすごいぞ。

 また,ロスの少ない直流給電の時代がくるとして,"W"なら直流で発電して直流で使えると力説していた(なんと本誌2008年12月29日号の特集「直流給電 省エネの切り札に」を引き合いに出していた)。だが,既存の家電製品は交流のコンセントから給電するよう設計されているのだから,今すぐ"W"を導入しても結局DC-AC変換が必要で直流給電にはならない。

 極めつけは,同社幹部の次の説明だった。

 「"G"の技術は,アナログの電気をデジタルに変換して貯めたり出したりできるようにしたものです。分かりやすく,キャパシタと言っていますが,本当は電気をやり取りするデータベースなのです」

 ハードディスクが情報を電子的に記録することを引き合いに出し,電気をデジタルで保存するという不可解な話を展開していた。アナログの電気?デジタルに変換?電気のデータベース? 技術っぽい単語を並べているが,情報信号ではないのだからエネルギー量にアナログもデジタルもないだろう。意味不明である。それとも私の知識が拙いのか…。

 量産体制もさっぱり分からない。5年前には某メーカーに電動アシスト付き自転車の電池として5000台を供給したというのだが,それならなぜいま現物がないのか。その自転車を見せてはどうなのか。疑問だらけの説明会だった。というか,途中で怖くなったというのが本音である。

 当初,"W"の発売開始は,2008年秋ということになっていたらしい。それが年明けへ,そして2月,3月,4月へとズルズルと延びているようだ。こうしたことから,インターネットの掲示板では同社の技術やビジネスの真偽を疑問視する声もある。そもそも,普通に考えれば,それほどの技術なら口コミなどで代理店を募らなくても自動車メーカーや電気メーカーが喜んで資金を出してくれるか,巨額で買い取ってくれるだろう。なぜ,現物を見せずにセミナーで個人代理店を集めるのか,「できた」「動いた」という話はするが実験などの客観的な定量データがなぜないのか――。

 残念ながらセミナーではその技術を信用できるような説明は聞けなかった。同社は,先日アブダビで開催された「World Future Energy Summit 2009」にブースを出展していたようだが,同会場でもほどんと話題になっていなかったらしく,取材で訪れていた他誌のK記者も全く気付かなかったという。これほどの技術なのに?もしこの技術が本物なら,電池業界を根底から覆す大発明なのに…。

自律回復って

 気になっていたので,先日,セミナーに参加した一個人として,怪しまれない程度に電話で質問してみた。(以下,Gは開発企業)

筆者:「"W"は,5分の充電で家庭の電力をまかなえるということですか?」
G:「その通りです」
筆者:「本部で稼働状況を一括監視しているというんですがどうやって?」
G:「"W"が信号を出して本部で受信するんです」
筆者:「(そりゃそうだ)独自の通信技術か何かですか」
G:「そうです。無線で信号を送るんです」
筆者:「ところで,太陽電池パネルだけでもすごい発電効率だと思うんですが,これだけを販売したりしないんですか?」
G:「世界的権威の技術者が開発していますから。ただ,我々の技術は,あくまで"G"が主体なので単独で販売することは考えていません」
筆者:「あの小さな太陽電池パネルで"W"を5分で満充電できるんですか?」
G:「(はっきり可否はいわず)夜や曇りの時は発電できませんから,太陽電池で足りない分は蛍光灯の光や温度とか…(ごにょごにょ)」
筆者:「(温度?)よく分かんないんですが,発電機能があるんですか?それとも不足分はコンセントから給電するんですか?」
G:「いえ,発電機能はありません。キャパシタですから。コンセントから蓄電したら環境対策として意味がありません。とにかく自律回復機能があるんです」
筆者:「(自律回復?意味不明だけど,これ以上聞いてもムダだな)…そうですか。ありがとうございました」

 結局さっぱり分からない(素人を装っていたので,突っ込みきれなかった)。後日,日経エレクトロニクスの記者を名乗って取材を申し込んでみた。一旦は取材の約束を取り付けたものの,当日の朝になって急遽先方の都合が悪くなったとのことでキャンセル。近日中に,再び訪ねる予定となっている。革新的な発明なのか,はたまた…。続きは取材後にまたお届けしたい。

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