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日経エレクトロニクス雑誌ブログ

「セカイカメラ」に感じた閉塞感打破の可能性

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2009/03/02 09:30
内田 泰=日経エレクトロニクス

 「最初はiPhone用のアプリケーションを提供しますけど,今後は携帯機器自体を開発したいと思っています」。大学で哲学を専攻したという異色の経歴を持つ彼は,真剣な眼差しでこう言いました。

 彼とは,頓智・(とんちどっと,と読む)という変わった名前のベンチャー企業を経営する社長の井口尊仁氏です。既にご存知の方も多いと思いますが,頓智・が開発している「セカイカメラ」というiPhone向けアプリケーションは,2008年9月に開催された「TechCrunch 50」(米IT系情報サイトTechCrunch主催)というカンファレンスで大きな話題となり,一躍メディアやインターネットのコミュニティで注目の的になりました。つい先日は,フランス・パリで開催された国際フォーラム「世界を変えるインターネット技術10」で,10選の一つに選ばれています。
アプリケーションの正式公開はまだだというのに・・・。

 セカイカメラはiPhoneのカメラを通じて見える現実の光景に,ユーザーなどが入力する「ソーシャル・タグ」を重ね合わせて画面に表示する,いわゆる拡張現実(AR)アプリケーションです。iPhoneの画面上に,ユーザーの近くにある場所やモノに関する口コミ情報などをリアルタイムに表示します。例えば,見知らぬ土地を訪れた際に,「ここの味噌ラーメンは最高です」などといった口コミ情報が得られたりします。

 これはほんの一例で,井口氏が熱く語るセカイカメラのビジョンには未来感というか,将来の発展の可能性を感じました。それと同時に強く印象に残ったのが冒頭の言葉です。もしかしたら,「ヒット商品不在」に悩むエレクトロニクス業界に漂う閉塞感を打破するのは,このように異分野から来て機器の開発に取り組もうとする人たちなのではないか。ふと,そう思ったのです。

機器開発の敷居が下がったからできる

 井口氏は機器開発にも取り組みたい理由について,「iPhoneはセカイカメラのビジョンをすべて実現するには,ハードウエアの力が不足している。例えば,コンパス用磁気センサ・モジュールを内蔵していない。我々のビジョンをすべて実現できるような機器を開発したいんです」と話します。

 このような発言は,数年前までなら絵空事に聞こえたでしょう。しかし,最近ではデジタル機器開発の敷居が従来に比べてぐんと低くなってきました。エレクトロニクスの大手メーカーのような大資本でなくても,機器の種類によっては開発できるようになっています。
 
 例えば,米Google Incが開発した携帯機器向けプラットフォーム「Android」は,デジタル機器開発の敷居を大きく下げる要因の一例といえます。Androidは,OS,ミドルウエア,ユーザー・インタフェースなどを含むソフトウエア・プラットフォーム一式をオープンソースで提供します。日本Androidの会会長で早稲田大学大学院客員教授の丸山不二夫氏は,Android登場のインパクトについて「機器開発に対する参入障壁を大きく下げた。極端な話,誰でもケータイを作れるようになる」と話しています。

 井口氏のような面白くて楽しいサービスのアイデアを持った人たちが,あくまでもサービス側の視点から独自のデジタル機器を開発する。そんな時代がすぐそこに来ているような気がします。

 日経エレクトロニクスは3月18日,機器の企画・開発者などを対象にしたセミナー「Androidが創るエレクトロニクスの未来」を開催します。そこでは井口氏も登壇していただき,セカイカメラのビジョンやAndroidに対する期待などを熱く語っていただきます。この機会をぜひ,お見逃しなく!

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