日本の大学はなぜ情報発信しないのか
米国への3カ月半の出張から帰国しました。暖かい西海岸から日本の冬に戻ると,寒さに体が適応できず,周囲の人よりもかなり厚着でないと外を歩けません。もう若くないというだけかもしれませんが。
今回の出張に限らず,前から思っていたことですが,日本と米国で大きく違うことの一つに,大学の情報発信力があると思っています。企業のそれには大きな違いがないにもかかわらず,こと大学となると,なぜか差が目に付きます。
米国の有力な大学の多くは,大学のWebサイトに研究開発専門のニュースを掲載するページを持っています。多いところは1日に複数のニュースが追加されていきます。数の多さだけでなく,内容も面白いのです。多くは大学専属のライターが難しい内容のポイントやインパクトを分かりやすく簡潔に伝える努力をしています。簡潔すぎてそれだけでは情報不足という場合もありますが,その場合は論文を直接読めばよいのです。ニュースのページ以外でも,その大学の個性や主張がよく出ている場合が多いのです。
その良い例が,米Massachusetts Institute of Technology(MIT)です。同大学は,Webだけでなく紙の大学新聞でも積極的に研究室や研究開発の成果を紹介しており,単なる大学の活動紹介を超えた,一つの科学技術情報メディアとして重要な役割を果たしています。
一方,日本の大学はというと,最近かなり改善してきたとはいえまだまだです。研究開発専門のニュース・ページを設けているのは,調べた範囲では京都大学などかなり少数。研究開発どころか,大学発のニュース・ページ自体を用意していない大学も少なくありません。研究開発のニュースを出している場合でも,更新頻度が月1度かそれ以下と遅かったり,研究者自身が書いているためか学会の予稿とさほど内容や表現が変わらず,専門外の人に分かりやすく伝えようという意思が感じられなかったりします。大変残念なことです。
大学の実力自体はあるのです。取材で研究室を訪れると,廊下に研究成果がポスターで張っている場合が少なくなく,その内容も面白い。研究室や学部単位でWebに発信している例もありますが,こうした個々の成果を,学会や論文以外で,大学の意思として収集し外部に発信するシステム作りは日本ではまだ不十分といわざるを得ません。大学としては,こうした研究開発の成果はまさに宝のはず。それを伝えないのは宝の持ち腐れです。せっかくインターネットという情報発信手段があるのにそれを活用しないのは理解に苦しみます。
人は最先端の話に飢えている?
最近,理系離れ,工学部離れの話をよく聞きますが,学校のイメージが少し変わるだけで,志願者数が大きく違っています。例えば,2008年のノーベル物理学賞を受けた益川敏英氏が在籍する京都産業大学は,2009年の入学志願者が例年の2倍以上になったと聞きます。科学教育に力を入れると発表している「横浜サイエンスフロンティア高校」にも志願者が殺到しています。
もっと言えば,一般の人は最先端の科学技術の成果に対する知識に実は飢えているのではないか,と思っています。理由の一つは,世界的に急増していて,日本では東北大学などが積極的に開催している「サイエンス・カフェ(Cafe Scientifique)」が,ほぼ毎回盛況と聞くため。サイエンス・カフェには私もまだ参加したことがありませんが,ただの講演会と違って最先端の研究者と双方向で話せるのが魅力とか。こうした動きを目にするにつけ,情報の出し方,伝え方をもっと工夫すれば,人々の興味を科学技術へ引き戻すことができるのではないかと思っています。


















